【新型コロナ】増産相次ぐ人工呼吸器・心肺装置、運用に課題も

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新型コロナに収束の兆しはない(イメージ)

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内の医療機器メーカーが相次いで人工呼吸器などの増産に乗り出している。三幸製作所(さいたま市西区、金坂良一社長、048・624・8121)は人工呼吸器の増産に向け生産体制を整備した。同社は年間50台程度の人工呼吸器を生産しており、10倍の500台程度まで増産できるよう部材や生産ラインを確保した。大手では、ニプロが人工心肺装置(ECMO=用語参照)の部品の出荷体制を整えたほか、テルモもECMOの増産を始めた。(取材=森下晃行、安川結野、大阪・中野恵美子)

【動物用転用も】

吸引器や麻酔装置を手がける三幸製作所は、海外向けの人間用人工呼吸器と国内向けの動物用人工呼吸器の2種類を生産している。それぞれ10倍まで増産できるよう生産体制を強化した。「緊急時に動物用の機器を人間に転用しなければならない状況も見据え、部材などを確保している」(同社)という。

テルモも人工心肺装置を1月下旬から増産。人工心肺装置は現在、全国で約1400台普及しており、テルモの装置は国内シェア7割を占める。今後数カ月以内に「年間の出荷計画を前倒しにする形で、100台程度を増産する」(同社)。

三幸製作所の人工呼吸器「ロータス SS―1200」

【部品出荷体制整う】

ニプロはECMOに使用する部品「ニプロコーティング膜型人工肺」の出荷体制を整えた。同社は国立循環器病研究センターなどと共同で可搬式のECMOを開発し、薬事承認を経て2021年の発売を目指している。

新型コロナ感染症は世界的に拡大しており、海外市場を対象にした増産も続いている。旭化成傘下の米ゾール・メディカルは、欧米市場向けに人工呼吸器を月1万台増産する。現在の生産数の約25倍に達する見通しだ。

【欧米など向け】

日本光電傘下の米オレンジメッドも欧米や新興国向けに人工呼吸器を増産する。「部材の調達先との交渉次第だが、今期から年間で数百台を生産する」(同社)という。日本光電本社も欧州向けに生体情報モニターの出荷台数を増やしている。

新型コロナ感染症の拡大で、医療現場の機器が不足する懸念が高まった。各社は増産で対応する。

人工心肺装置は1人の患者に対し複数の医療スタッフが24時間対応する必要があり、スタッフにかかる負担は大きい。装置を操作する臨床工学技士はトラブル発生時の対応などで経験や知識が求められるため、運用できる人員が限られる。

東京医科歯科大学医学部附属病院(東京都文京区)MEセンターの臨床工学技士・倉島直樹技師長は「人工心肺装置の運用例が年間5例以下の病院も多く、経験が足りない技師が多い」と指摘している。

【用語】人工心肺装置(ECMO)=重症呼吸器不全患者などに使われる生命維持装置。患者の静脈に管を挿入して血液を取り出し、酸素を付加する。同時に血液中の二酸化炭素を除去して再び患者の体に戻す。これにより、血液中の酸素濃度が回復する。呼吸機能が低下した場合、まず人工呼吸器で肺に酸素を送る。ECMOを使用するのは人工呼吸器では補えないほど症状が悪化した場合だ。重症患者の管理に加えて装置の取り扱いが難しいため、正しい知識と臨床経験を持つ医師や看護師、臨床工学技士らがチームで使用する。

日刊工業新聞2020年4月3日

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