ウールの産地「尾州」で広がるマスク生産の動き。シルクや手作りキットも
尾州産のマスクはいかがですか―。愛知県一宮市を中心に広がるウールの産地「尾州」で今、新型コロナウイルス感染症拡大によるマスク不足を受けて、生地の特徴を生かしたマスクやマスクの手作りキットを生産、販売する動きが出てきた。一方で宮田毛織工業(愛知県一宮市)は、生地の無償提供を数量限定で実施。供給不足状態にあるマスクを少しでも補填するため、「繊維のまち」が立ち上がった。(名古屋・浜田ひかる)
長谷川商店(愛知県一宮市)では16日から、マスクの店頭特設スペースを開設。自社技術を生かしたシルクマスクや自主制作キット3種類を販売する。売れ行きは好調で、「1日で300枚は販売」(担当者)した。自社サイトでも販売するが、「すぐに品切れになる」(同)状態だ。
中でも注目を集める商品は、長谷川勝社長自らが考案した「おでかけシルクマスク」。耳部分までシルク生地で、付け心地がいいと評価は高い。ウイルスや花粉の侵入をブロックする効果はないが、「せきエチケットでマスクが必要な時代。マスク不足に多少でも貢献できれば」(同)と数日で開発した。
丸安ニット(名古屋市西区)は、綿100%リバーシブルジャーガード「maffon(マフォン)」のマスクキットを2月下旬から販売。肌触りが良く、今までは子ども服用の生地用途が中心だった。「マスク用カットクロスセット」はマスク用ニット生地3枚と、当て布用のオーガニックコットン生地1枚のセット。2月下旬から自社サイトで販売を開始し、「2週間で250セット売れた」(担当者)。生地の売れ行きも、通常の5―6倍という。
また美濃和紙からよった糸で編んだ「siffon(シフォン)」でも、3月中にマスクの商品化を模索する。和紙は抗菌作用や脱臭効果が認められており、「まずは当て布からはじめる」(伊藤安則社長)という。
一宮を拠点に活動する縫製グループkagariでは、3月上旬から2―3日に1回、30―50枚の手作りマスクを名鉄百貨店一宮店(愛知県一宮市)に納品。「つくってもつくっても、注文がやまない」(宮本純子代表)状態が続いているという。同百貨店のマスク特設販売スペースで販売している。
一方で宮田毛織工業は19日、1日限定でマスクのサンプルと生地、型紙を無償で35セット配布。佐竹一徳企画室室長は、「社会貢献の一環。他のニットメーカーにもまねしてほしい」と「無償の輪」拡大を望む。状況次第で、2回目の開催も検討する。