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北京の海外1号店わずか1年で退店したコメ兵、海外展開はどうする?

コメ兵がブランド品リユース事業の海外展開で最初の壁に突き当たっている。2018年に中国北京市に開店した海外1号店を、わずか1年余りの19年12月に退店した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で先行きが見通せない状況だが、海外事業は中長期における同社の成長戦略に欠かせない。石原卓児社長に課題や展望を聞いた。

―北京市の店舗を退店した背景について。

「最大の理由は“自給自足体制”を確立できなかったから。中古品は売れるが、買い取りが思うように進まなかった。上海市の子会社から商品を供給していたが、自給自足体制が確立できない以上、北京に拠点を構え続ける理由はない。今後の中国出店は慎重に検討していく」

―一方で19年11月にはタイ・バンコクに進出しました。

「バンコクは有望なリユース市場だ。ブランド品を持て余すアッパー層が多く、買い取りも問題ない。というのも、現地では中古品事業者の大半が個人事業主で顧客が中古品を売る場所が少ないからだ。当社もブランド品を持つ潜在顧客が安心して売れる信頼を築くことができれば、将来的に大きなビジネスに成長するだろう」

―19年12月に同業のブランドオフ(金沢市)を買収しました。目的は。

「ブランドオフは当社が持たない北陸地域の店舗網、2拠点のオークション会場など、すべてが魅力的。海外についても香港、台湾などに(直営店、フランチャイズ店含め)20店舗構えている。今後、海外でブランドオフ店舗を生かしつつ展開するが、コメ兵とブランドオフの両店舗ブランドをどうすみ分けるかは考えていかなければいけない」

―海外事業の展望は。

「まずはバンコクでこつこつ積み上げて、タイにおける中古ブランド品のシンボリックな存在を目指す。(中国を除く)ほかのアジア諸国への出店は時期尚早。海外は店舗物件確保や警察対応などで、現地の信頼できるパートナーを見つけることが重要で、急展開は良くない。とはいえ人工知能(AI)による真贋(しんがん)判定の導入が進めば(現地での鑑定士教育の課題を解消でき)もう少し前進するだろう」

【記者の目/買収で海外事業新展開】
店舗の退店に加えて、足元では新型肺炎が拡大する中国。ただ中長期で事業強化する方針は変えておらず仕切り直しといったところ。海外で商習慣の違いに戸惑うコメ兵。石原社長は同社の海外事業を「業界の先駆者」と強調する。そんな中でのブランドオフ買収は大きな意味を持つ。そのノウハウを取り込む次の一手が注目される。(名古屋・浜田ひかる)


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日刊工業新聞2020年3月23日

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