世界一のデザイン祭典「ミラノサローネ」にみる日本人の活躍
世界のデザイントレンドを知ることは企業の商品や製品開発には欠かせない。情報を収集する上で注目してほしいのが毎年4月にイタリアで開催の「ミラノサローネ」の名で親しまれる「サローネ・デル・モービレ・ミラノ」だ。家具とインテリアデザインの世界最大の国際見本市で、58回目を迎えた昨年4月の来場者数は、6日間で約38万人。181カ国からデザイナーやビジネスマンなどが訪れた。会場は東京ドーム11個分という広さで、参加企業は2000社を超えた。
同時期にミラノ市内では、ミラノサローネに集まる関係者をターゲットに、さまざまなイベントが開催される。これらをフォーリサローネ(サローネの外の意味)と言い、ミラノサローネと合わせて「ミラノデザインウィーク」と呼ばれ、世界一のデザインの祭典と言われるようになっている。
私も十数年足を運び、定点観測を行っているが、家具とインテリアの見本市の枠を超え、日本からもレクサスやソニー、グランドセイコーが出展し、欧州のラグジュアリーブランドのエルメスやルイ・ヴィトンなどが展示に力を入れていることから分かるように、ブランドが世界へ向けてその世界観を発信する重要な場となっている。色や素材のトレンドが決まるという点でも、単に家具やインテリにとどまらず、幅広い業界に影響を及ぼしている。各企業の世界観を表現したインスタレーション(現代美術の手法の一つ)ではデザインの力が試される。
昨年は特に日本人の活躍が目立った。550人が参加した若手デザイナーの登竜門「サローネサテリテ・アワード」では、1位がKULI−KULIの山内真一氏、3位に坂下麦氏と2人の日本人デザイナーが受賞した。今やデザインの代名詞のようなデザインオフィス「nendo」を率いる佐藤オオキ氏もこの賞の受賞で脚光を浴び、その後の活躍の場を広げた。サローネサテリテ・アワードは、時代の社会問題をテーマに選ぶところも面白い。昨年は「デザインすべき対象の食」がテーマだった。ミラノサローネの分析は、自社の商品・製品の開発だけでなく、先進企業のデザインや社会の動向を知る上でも有意義なものだ。