家具にセンサーで最適オフィス提案、オカムラの狙いは「受注平準化」にアリ
オカムラは、オフィス家具の使用状況を見える化して最適なオフィス環境をつくるためのIoT(モノのインターネット)サービスの開発を始めた。オフィス家具にセンサーを搭載して、使用状況をデータ化する。データ分析に基づいた提案やアフターサービス、働き方改革支援などにつなげる。2020年中に実証実験をはじめ、21年からサービスを提供する。25年には全新製品への新サービス対応を目指す。
【センサー活用】
IoTサービスの開発には、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」とサトーのセンサーを活用する。オフィス家具に搭載したセンサーによって、設置場所やイスの着座、上下昇降デスクの使用頻度などを計測してデータ化する。
また人の動きや場所の評価もデータ化してクラウド上に集約することで座席や部屋、テナント単位でのオフィスの使用状況を可視化する。データの蓄積や分析によって、使用状況に合うレイアウト変更や、オフィス家具の消耗度合いを把握できる。20年中に、東京・丸の内の会員型コワーキングスペース「point 0 marunouchi」において実証実験を始める予定だ。
【受注が平準化】
オカムラでは、オフィス家具を販売した後の使用状況やオフィスの姿が分からないといった課題を抱える。特に日本ではオフィス整備は生産性向上のための投資というより、年度末の予算消化に用いられることが多い。予算消化や新入社員のための買い増しのため、2―4月の短期間に年間の半分の受注が集中するのも特徴的だ。受注時期が平準化されれば、余剰在庫の削減や配送車両の不足、施工現場での人手不足解消にもつながる。
オフィス投資による成果をデータとして出しにくいため、経営層も戦略的に投資しづらい問題がある。企業の総務担当者も納品後のオフィスの様子を調べる手段がなく、定量的に調査できていないのが実情だ。マーケティング本部DX推進室の遅野井宏室長は「総務がデータを持つことによってオフィス改革に取り組みやすくなる」と言い、IoTサービスによる踏み込んだオフィス管理の実現を目指す。
米国などの外資系企業ではファシリティーマネージャーが配置されるなどオフィス環境整備も経営投資の一つとみなされている。遅野井室長は「データに基づくファシリティーマネジメントの実現によって経営側が投資しやすいだけでなく、働く人も主体的に働きやすい」と話す。
また同じ業界で働く人の動向や人数・規模による傾向が分かれば、それを参考にオフィス環境を整備できる。
【働き方改革支援】
21年にはオフィス家具に計測用センサーをつけて販売を始める。これまでのデザインや使用感を崩さず、使用者にとって利便性を損ねない設計が求められる。家具としての機能性と収集したいデータやコストのバランスを考慮する必要がある。あくまでも監視にはならないよう、働き方改革の支援につなげていく。(取材・高島里沙)