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デザインで「キッズ・ファースト」、積水ハウスが経営戦略の重要な柱に

デザインで「キッズ・ファースト」、積水ハウスが経営戦略の重要な柱に

わずかな隙間でも子どもの小さな指先は挟まれやすい点を考慮し、挟みにくい折れ戸を開発した

子どもたちが安全に暮らせ、感性豊かな成長を支援する商品・サービスを、キッズデザインと呼ぶ。そのデザインを家づくりに積極的に取り入れ、「キッズ・ファースト」として経営戦略の重要な柱に掲げているのが積水ハウスだ。

年齢や性別の違いなどを問わず多くの人が利用できる、ユニバーサルデザインという考え方は広く知られている。しかし、積水ハウスがキッズデザイン戦略の推進に当たりユニバーサルデザインの中身を改めて検証した結果、シニア世代に向けた対策には力を入れている一方で、子どもの研究が不十分なことが判明した。同社住生活研究所の河崎由美子所長によると「特に6歳以下のデータがほとんど存在しなかった」そうだ。

このため「高齢者に配慮した設計で、子どもも過ごしやすい空間になっているはず」といった既存概念に基づくものではなく、しっかりしたエビデンスを残すことにより子どもの安全・安心を優先した住まいづくりを目指すことになった。

データの取得に向けてはさまざまな取り組みを行った。そのひとつが測定キャラバンで、保育園に足を運んで子どもの行動パターンを観察していった。また、金属だと冷たくて嫌がられるのでコルク製のノギスを作って頭の大きさを測ったり、手の厚みなどを測定し、得られたデータを資料化していく。

キッズデザインの追求は、コスト増につながりかねない。また、部材の角を丸めたりするとシャープさが失われ、デザイン性が損なわれるといった理由で、社内では慎重な意見もあった。しかし、キッズデザイン協議会という業界の垣根を超えた団体が2007年に設立され、子どもの安心・安全に結びつくデザインへの関心が消費者の間で高まるはずと経営層が判断。全社一丸となって本格的に取り組んでいくことになった。

その結果、指を挟みにくい折れ戸や化学物質の抑制と換気によって空気環境を守る「エアキス」仕様などさまざまな部材や機能を開発。標準装備の動きも順次進んでいった。キッズデザインが結果として商品の性能を押し上げ、顧客満足度(CS)の底上げに寄与したと言えよう。

(文=秋山浩一郎・デロイトトーマツベンチャーサポート第4ユニット)
日刊工業新聞3月20日

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