進化が止まらない内視鏡。がん治療に使い捨て、サブスクまで…
オリンパスの医療事業の売上高6343億円(2019年3月期)のうち内視鏡事業は66%を占める。世界シェアの7割を握る同社の大黒柱だ。内視鏡の前身である胃カメラを1950年に世界で初めて実用化して以来、常にトップを走り続けられた理由を、治療機器事業処置具ビジネスリーダーの小澤剛志は「日本の医師と二人三脚で診断や治療を開発し、世の中に広めてきた」と説明する。
内視鏡は診断だけでなく治療もできる医療機器だ。例えば内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、早期のがん腫瘍を内視鏡の先端の超小型メスで切り取る治療で、がんの程度によっては体を切開する手術をせずに済む。この治療は約17年前にオリンパスが医師と共同開発し、今では世界中に広がっている。
これまで築いてきた「不動のポジションをさらに強化する」と執行役COOの田口晶弘は先を見据える。その戦略の一つが「使い捨て(シングルユース)の内視鏡を新たにラインアップに加える」ことだ。同社はこれまで洗浄による再利用(リユース)の内視鏡を製造してきたが、シングルユースは初の取り組みだという。
シングルユースのメリットは感染症対策だと田口は話す。例えば直径5ミリ―10ミリメートルの総胆管に挿入する内視鏡は、細い直径と耐久性が求められる。洗浄過程で壊れるリスクを考えると「シングルユースが使われる市場がある」(田口)。市場規模は約1000億―1200億円の見通しだ。
人工知能(AI)を活用し経験の浅い医師でも病変部を的確に診断できる新たな内視鏡システムも開発中だ。「診断のステージを一歩アップさせる」と田口は意気込む。さらに、従来にない角度から内視鏡事業の強化を試みる。一定額を支払うことでさまざまな種類の内視鏡を使用できる「サブスクリプション的なビジネスモデルも考えている」(同)。内視鏡事業は今後3年間で6%の平均成長が目標だ。オリンパスの武器である早期発見と低侵襲をさらに世界で広めるべく同社は取り組み続ける。(敬称略)