エアコン売り上げのダイキン工業“カリスマ店員” その説明力とは?
【時間軸を考え】
「テレビやパソコンはメーカーにこだわるコアなファンが多い。一方、家庭用エアコンはそうではない」。ダイキン工業の販売子会社のダイキン・コンシューマ・マーケティング(東京都江東区)営業統括部西日本営業本部近畿地区長、大塚雅洋(39)は消費者動向をこう分析する。だからこそエアコンの販売は家電量販店を訪れる客への“説明力”次第で商機は広がりやすく「面白い」(大塚)。
客のこだわりの多くは価格。ダイキン製が他社製より高価なら、その理由を客に納得させるのも説明力のうち。「最も効果的なのが(節電効果や快適性を示す)数字だ」(同)。
ただし時間軸も考えた数字を挙げるのがポイント。新製品を毎年発表するメーカーは1年ごとの性能差を争うが、客は毎年エアコンを買うわけではない。購入サイクルも考え「10年前のエアコンと比較して説明する」(同)。目の前の価格も、10年後まで使う場合を説明して客に判断してもらう。過去・現在・未来と20年間を振幅して商品価値を訴求する。
【カリスマ店員】
大塚は近畿圏の家電量販店にエアコンを販売する責任者だ。土日は量販店に出向き、製品を自ら売ることもある。実は大塚の前職は量販店の店員。エアコンの売り上げで群を抜くカリスマ店員だった。
【納得導く道具】
当時の仕事道具は、あえて大きいサイズのノートや電卓。メモ帳ではなくA4サイズのノートにエアコンを設置する部屋の間取りを書く。「見やすく、話も進みやすい。お客さまに納得感が生まれる」(同)。電卓も胸ポケットサイズよりも大きく、ケタが分かりやすいものを使い、細かい気遣いを心がけた。今も量販店で接客応援するときは必携だ。
唯一接客術で参考にした書籍が『ディズニー7つの法則』(トム・コネラン著)。テーマパークで客を楽しませる工夫の数々に「これぞ接客!」と衝撃を受けた。「買い物には楽しみの要素がある。我々も量販店に来たお客さまが喜んで、楽しんで帰っていただく接客や展示、イベントをやらないと」(同)と、アイデアをめぐらせる。(敬称略)