つい欲しくなる!三菱電機販売員のスゴ技と七つ道具とは?
店頭や展示会、見本市に不可欠なのが商品の説明員(販売員)だ。目の肥えた来店者や来場者を引きつけるには、商品のポイントを短時間で分かりやすく解説し、時には当意即妙なアドリブを交えた話術が求められる。特にベテランの説明員ともなれば独自の「節回し」など、それぞれ磨き上げた“ワザ”を持っているはず。電機メーカー4社の自慢の説明員に、そのワザや相棒となる「七つ道具」を開陳してもらった。第1回は三菱電機。
【指し棒駆使】
とある家電の展示会。「緑一色はどうですか、ぱっ」、「こんなんどうですか、はい。ばっ、トマト」―。
威勢よい声の主は三菱電機京都製作所AV営業統轄部グループリーダーの井上二郎(67)。色鮮やかな映像を同社製の液晶テレビにテンポ良く映し出し、手に持った指し棒を駆使して画質性能を解説する。「真っ赤なトマトの水滴感、どうですか。食べよかと思いますね」。ユーモア混じりの話に、いつの間にかテレビの周りは人だかり。井上の説明を楽しみに展示会に足を運ぶ業界関係者のファンもいる。
【売り上げ3倍】
井上は説明員歴30年以上の大ベテランだ。量販店の販促イベントに出向けば通常の3倍のテレビ台数を売り上げることも。若手営業部隊にプレゼン術の指導にも当たる。基本は笑顔で明るく楽しくだ。そして「自分をさらけ出す。そうすれば『あの人、情熱あるな』と(話に食いつく)」(井上)。
口酸っぱく言うのは、与えられた時間を守ること。「なんぼええプレゼンでも、時間が延びたらダメ。聴衆も時間を割いてる」(同)。30分で話したい内容も、必要ならば5分間に落とし込む。製品コンセプト、セールスポイント、そのポイントの整理、セールストーク、他社製品との違い、オンリーワン。「この6点を必ず5分の中に入れる。2―3回練習すれば慣れる」(同)。
【振りの言葉も】
三菱電機のテレビと言えば、画面を見やすい角度にリモコンで調整できる「オートターン」機能だ。展示会で井上は説明の途中「そちらの方、見えにくいですね」と振りの言葉を入れてから同機能を披露する。「説明の冒頭ではなく、“ここぞ”という瞬間に使う」(同)。性能を最大限アピールし、同時に聴衆も引き込める。
井上のトレードマークの指し棒。長・中・短の3本を常にかばんに忍ばせる。画面に対してレーザーポインターは不向きなことと、指し棒は見てほしいポイントを簡単に指せることから重宝している。
プレゼン術向上のため、食品や住宅など異業種のセミナーも聞きに行く。井上は「相手に伝えるとは『理解―了解―納得』だ。納得まで持っていく必要がある」と力を込める。(敬称略)
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