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『話を聞かない男、地図が読めない女』が参考 パナソニック販売員の仕事術を公開

連載 家電販売 説明員のワザ③ #パナソニック

手のひらサイズ四方の人工大理石の板。システムキッチンの説明をする時、パナソニックの仙石克幸(55)が使う仕事道具だ。仙石は住宅関連事業の社内分社ライフソリューションズ社のハウジングシステム事業部で水廻りシステムビジネスユニットに所属する。

この人工大理石は、他社の一般的なキッチンカウンターなどで昭和30年代から使われている素材。墨を付着させると洗い流すのが難しい。どう説明術に生かすのか。

ショールームに商材を見に来た工務店の社長。そういった客に対して、仙石は手元の人工大理石に墨を塗らせる。「実演はお客さんにもしていただく。実際に体感すれば記憶に残る」(仙石)。

墨は洗い落としづらい、何年も使えば汚れるのは当たり前…。こんな相手の言葉を仙石は待っていた。「それが当たり前じゃないんです。もう令和の時代ですよ」。仙石はたたみかけ、満を持してパナソニック製品の説明を始める。有機ガラス系素材を使う同社製品は汚れが付きにくく、丈夫だ。

手書き透視図

最初から自社製品の説明はしない。「こちらから他社製品の悪いことは言わない。他社の弱点を突けるポイントに話しを持っていく」(同)という。

客の「なぜ」と、それに対する「解答と驚き」の組み合わせ。その連続でセールストークを回し、自社製品の利点に帰着する。こうして納得感を増幅させる。

仙石は30年の説明員歴を誇る。今は営業戦略企画部SV戦略課の課長だ。全国約70カ所のショールームの説明員のレベルを底上げするため、5年ほど前に新設された部署だ。

他にも大事な仕事道具がある。キッチン周りのパース図(透視図)だ。パソコンソフトではなく、一から手書きで作る。3―5分で仙石が作成する間、施主は前のめりで話す。「お客さんとのコミュニケーションツールだ」(同)。

相手に応じて

説明術の参考図書は『話を聞かない男、地図が読めない女』(アラン・ピーズ他著)。男女の区分よりも、相手に応じた説明の仕方を心がけるきっかけになった。(敬称略)

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 実演では「音も重要だ」と仙石氏は強調します。シンクをこする音、キッチン台に鉄球を落とした時の音-。インパクトのある音が響いても傷一つないという事実が、音の実感とともに「優れた耐久性を持つ商品」として記憶に残ります。

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