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「東芝機械 vs 旧村上ファンド系」TOB応酬、それぞれの言い分と株主の判断は?

「東芝機械 vs 旧村上ファンド系」TOB応酬、それぞれの言い分と株主の判断は?

東芝機械会長兼CEOの飯村氏(右)とシティインデックスイレブンス社長の福島氏

東芝機械が検討する買収防衛策の是非が3月27日の臨時株主総会で判断される。東芝機械の企業価値、株主価値を向上させるのは、どちらの提案か。株主の判断に注目したい。

同社は旧村上ファンド系投資会社の子会社シティインデックスイレブンス(CI11)から、TOB(株式公開買い付け)を実施され、それに反対の意見を表明している。さらに、村上ファンド系以外の株主に新株予約権を無償で割り当てる、買収防衛策の導入と発動の可能性を表明していた。緊急時の買収防衛策と言われるものだ。

TOBは当初3月4日で終了予定だったが、CI11が4月16日まで延長を決めた。延長しなければ東芝機械は、取締役会決議で防衛策を発動する可能性もあっただけに、回避できたのは株主にとって良かった。

今後は株主が、東芝機械の現経営陣が示した中期経営計画などを見て、防衛策導入の提案について議決権を行使する。最終的な判断は、どちらの主張が、東芝機械の企業価値を向上させ、株主価値を上げることができるかにかかっている。

東芝機械は子会社の売却などで、内部留保を抱えているのは事実。変動の大きい工作機械、射出成形機業界で一定の手元資金が必要という同社の主張も理解できる。ただ、成長への投資や事業再構築が遅れ、株価純資産倍率(PBR)が1倍を割り込むままにしていたのが、アクティビスト(もの言う株主)につけ込む隙を与えた。

一方のCI11は、株主資本利益率(ROE)重視や自社株買いでの株価引き上げを求める。欧米ではアクティビストが、企業に厳しい株価上げを求めるのは当たり前で、CI11の行動は何ら不当ではない。ただ、昨今のアクティビストは、企業の事業を精緻に調べ、具体的な事業改善提案まで行う事例も多い。長い目で見て、株主価値を上げられるからだ。CI11のROEと短期の株価向上の主張は、古いやり方と言えなくもない。総会まで1カ月あまり。株主が判断を下せる十分で適切な情報の開示を求めたい。

日刊工業新聞2020年2月20日

東芝機械CEOインタビュー

東芝機械の飯村幸生会長兼最高経営責任者(CEO)とシティインデックスイレブンスの福島啓修社長にそれぞれの狙いを聞いた。

―買収防衛策の導入を取締役会で決議しました。
「今までの防衛策は期限が3年で対象者を特定しておらず、株主総会で承認を得た後に取締役会で相当部分を決議していた。今回の当社スキームは、株主の意思確認総会と呼ぶ臨時株主総会で決定する。対象は旧村上ファンド系だけ。ここが従来型とは決定的に違う。しかも6月の通常株主総会までだ。あくまでも強圧的な買い上げへの対応方針だ」

―事前に十分な協議がなかったと非難し合っています。
「1月10日に旧村上ファンド系から初めてTOBの話が出た。16日に20日公表、21日開始と連絡があった。この過程で企業価値や株主を守るのに他の選択肢はない。強圧的な買い上げに対しても、何も手を打たなければ善管注意義務違反になりうる。本来まずしっかりとした意見表明があり、話す期間があるはずだ」

―友好的な買収者を求める考えは。
「その種の検討を排除したことは一度もない。あり得ることだと思うが、当社のようなコングロマリット業態では難しい。工作機械メーカーが相手であれば、当社の成形機や押出機など他の事業も持って合流するのは、基本的に難しい」

―企業と株主の関係をどう思いますか。
「世の中は短期主義から変化している。08年以前とは変わった。スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを車の両輪とするのを読むと、企業には中長期的な成長を目指し、投資家側にも中長期の健全な投資をするように言っている。本来ならその中のエンゲージメントは一致するはず。今回はどちらが逸脱するかという話になる。村上世彰氏の経歴からは非常に明確だが、資本主義の中でそれが正しいと言うのなら、汗水垂らしてモノを作っている人のことを考えると全く納得できない」

CI11社長インタビュー

―中計をどう受け止めますか。
「ROE、営業利益の目標は評価できる。一方、過去5年間の中計はすべて未達だ。新中計以前の計画は去年5月に出したばかりだ。本当にできるのか」

―自己資本を厚めに持つという考えについては。
「大きな環境変化が起きた時、最大想定損失が自己資本の8割に納まっているかが適正な自己資本の額。健全性という観点から自社の持つべき自己資本を割り出し、経営者が自ら把握するべきだ。自己資本は多いほどいいと教わったが、ROEの考え方が出て変わった」

―TOB成立後の経営方針を詳細に伝えるべきでは。
「主要株主・大株主の我々に機械の製造販売の戦略を求めること自体間違っている。TOBは43%までで支配しないと言ってきた」

―東芝機械はオフィスサポートの事業主体が非居住者の村上氏と認識し、外為法上の潜脱行為ではと指摘しています。
「公表したオフィスサポートのバランスシートを見てほしい。総資産535億円、自己資本が534億円、短期長期借り入れはゼロ、未払い金が3400万円。自分の資産以外の何ものでもなく、不透明性はない。心象だけで潜脱行為だと言っていいはずがない」

―中長期の投資ですか。
「そうだ。1年で良い会社になったとして、我々が抜けた途端にボロボロになっては意味がない。投資会社なので短期の銘柄はゼロではないが、そうした会社の経営者には会っていない。経営者の皆さんとの対話を軸とし、中長期が基本だ」

―国は、取締役会での買収防衛策発動を状況により否定していません。
「例えば、政策保有株式は違法ではないが、コーポレートガバナンス・コードでは縮減の方向だ。違法合法の議論ではなく買収防衛策はやめよう。コンプライアンスも最初は法令順守だった。つまり正しくだけで当時は良かったが、今は清く美しくも求められている。それと同じだ」

日刊工業新聞2020年2月18日

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