2000年から生産が伸び続ける石けん・洗剤、清潔だけじゃない日本人のこだわり
毎日の手洗いや洗濯で多くの方が使っている石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤。日々の生活を清潔で快適に過ごす上で欠かせないものだが、いま日本での生産はどのようになっているのだろうか。
今回は、この石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤の生産動向をみていきたい。鉱工業指数で確認できる1978年以降に関して、石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤を含む「洗剤・界面活性剤」の生産推移をみると、1995年に低下に転じて以降、2000年まで低下傾向で推移した。しかし2001年に上昇に転じて以降、2009年には低下前の水準に並ぶまでに回復。その後も上昇を続け、基本的にはこの20年ほどにわたり、上昇傾向で推移している。
リーマンショックの影響で2009年に大幅な低下となって以来、勢いが感じられない鉱工業総合と比べると、洗剤・界面活性剤には安定的な強さが感じられる。
粉末から液体 あるいは香りを訴求
「洗剤・界面活性剤」指数の元データとなっている、各品目の生産数量を、経済産業省生産動態統計調査を用いてみてみよう。「洗剤・界面活性剤」に含まれる品目のうち、消費者にとって身近な石けん、合成洗剤、柔軟仕上げ剤について、2000年以降の生産量の推移を、それぞれの内訳品目も含めてみてみると、以下のようになる。まず、3品目とも、年によって若干波はあるものの、2000年以降、着実に上昇している。
さらに、それぞれの内訳品目ごとの動きにも着目してみよう。まず、石けんについては、昔ながらの「浴用・固形」の生産量は減少している一方、「手洗用・液体」や「洗顔・ボディ用身体洗浄剤」の生産量は増加している。企業の努力による製品の進化が、新たな需要の開拓につながっている様子が感じられる。
次に、合成洗剤については、「洗濯用(粉末)」の生産量は大きく減少する一方、「洗濯用(液体)」の生産量が大きく増加している。洗濯用洗剤については、昔ながらの粉末より液体の方が、水に溶けやすく扱いやすいことなどから人気のようだ。合成洗剤についても、消費者にとって使いやすい製品の開発に関する企業努力が感じられる。
柔軟仕上げ剤についても、年々生産量が増えている。これについても、企業が香りの良さを訴求した製品を開発・販売したことが、需要の拡大につながったとも言われている。このように、石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤の生産量の増加の背景には、企業努力による製品の進化があることが感じられる。
世帯当たりの年間消費も増加傾向
次に視点を変えて、石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤を使用する、家庭での消費動向をみてみよう。これらの消費を、世帯数要因と1世帯当たりの消費要因とに分けて考えてみると、わが国では単身世帯の増加や核家族化により世帯数も増えている一方で、1世帯当たりの消費も増えているようだ。
家計調査(総務省)と消費者物価指数(総務省)のデータを用いて、価格変動の影響を取り除いた、石けん、洗剤、柔軟仕上剤への1世帯当たりの実質年間支出の推移を試算してみると、以下のグラフのようになる。年により波はあるものの、いずれも1世帯当たりの実質年間支出は増加傾向にあることがわかる。各世帯で石けんや洗剤、柔軟仕上剤を使う量や機会が増えてきている背景には、清潔志向の高まりもあるのかもしれない。
このように、石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤の生産は、過去20年近く、概ね右肩上がりの上昇が続いているが、その背景には、企業のさまざま新製品開発努力や、消費者の清潔志向の高まりも垣間見える。
毎日使う石けんや洗剤、柔軟仕上げ剤だが、「洗う」「清潔を保つ」という以外にも、除菌や防臭効果などの機能や、嗜好を満足させるさまざまな香りなど、多種多様な製品が開発・販売されている。日々使うものだからこそ、消費者に支持されるべく企業努力により新しい機能が開発され、今後も進化を続けていくのかもしれない。