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「世間の人が喜ぶか、無くてもよいと思うかを考えよ」 自らのDNAに挑む第一生命

「世間の人が喜ぶか、無くてもよいと思うかを考えよ」 自らのDNAに挑む第一生命

キーワードが「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上」(写真はイメージ)

「最良の追求」と「変革の精神」―。第一生命ホールディングスに脈々と流れる創業来の事業哲学である。最良を求め、変化をいとわない同社の姿が鮮明になったのが2010年の株式会社化だ。時代の風を敏感にかぎ取り、21世紀のあるべき保険会社の“かたち”を模索した一つの解が組織の大改革だった。あれから10年。少子高齢化はさらに進み、超低金利の逆風にさらされる中で生命保険会社の使命とは何か―。最良であるために変革を続ける第一生命の挑戦に終わりはない。

「110年以上の歴史がこの10年で大きく変わった」。社長の稲垣精二はこう振り返る。実際、何が変わったのか―。

目に見える変化と言えば、グループの「総合力」の向上が挙げられる。株式会社化した当時、グループの売り上げは、中核の第一生命保険の売り上げ規模とほぼ同額だった。俗にいう「連単倍率1倍」で、グループを支える図式だった。それが国内の事業領域の拡大、積極的な海外進出などにより、国内外に10のブランドを持つ保険グループを形成するまでに成長。18年末時点で売り上げを示す新契約年換算保険料は10年前の約3倍に達した。

グローバル化も変化の一つ。超低金利、人口減少という国内事情にあっては、保険会社といえどもグローバル展開は避けては通れない戦略。運用益の確保や貯蓄性商品の開発が難しい中でも、地理的分散などで高い収益力を実現。19年3月期の連結当期純利益は2250億円と安定成長を続けている。

株式会社化、それに続く持ち株会社制度導入という組織改革を実現し、一定の成果を示す第一生命ながら、令和時代の生保業界を取り巻く環境変化は依然激しい。

長寿化による「人生100年時代」の到来や少子化などの社会構造の変化に加え、「生き方の多様化」が急速に進んでいる。50歳時未婚率の上昇やフリーランスの広がりなど、従来の画一的な生活モデルを描きにくくなった。稲垣は「令和時代の人生は、1本の決められたレールではなく、柔軟かつ複々線的にダイナミックに動くことが当たり前になる」と指摘する。

需要側の変化に対し、供給側である同社はどう対応するのか。キーワードが「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上」だ。物理的な豊かさだけでなく、精神面の豊かさを含めた概念であるQOLの構成要素を、「健康」「お金」「つながり」の三つと定義。保険商品にとどまらないサービスの提供を通じ、各要素を充実させることが顧客の幸せにつながると考えている。地域および世界で、社会課題に挑戦し、人々のQOL向上に貢献することで持続的な成長を実現する意向だ。

第一生命創業者の矢野恒太は「世間の人が喜ぶか、無くてもよいと思うかを考えよ」との言葉を残した。稲垣は「保険会社のビジネスはまだまだ可能性を秘めている。変革を恐れずに顧客のQOL向上に貢献する」と意気込む。創業時から受け継ぐDNAである「最良の追求」と「変革の精神」を胸に未来を切り開く。

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日刊工業新聞電子版で「挑戦する企業「第一生命」編を連載中
日刊工業新聞2020年2月3日

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