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“技術の足跡”が剥き出しでずらり、「日産エンジンミュージアム」の愉しみ方

“技術の足跡”が剥き出しでずらり、「日産エンジンミュージアム」の愉しみ方

開発したエンジンを並べるミュージアム

“技術の日産”の足跡がここに―。日産自動車が運営する横浜工場のゲストホールには、国内外から入場者が訪れる。目玉となるのが、日産が開発してきたエンジンを展示する「日産エンジンミュージアム」。2019年に展示内容を更新し、世界で初めて実用化に成功した最新鋭の可変圧縮比(VCR)エンジンのほか、ダットサンなどの名車に搭載された旧型のエンジンなどが並ぶ。過去から現在にわたって、技術力の源を発信している。

同ミュージアムは同社のルーツであるダットサンの「4気筒サイドバルブ式エンジン」や27基のエンジンがテーマ別に集められる。

直近では約20年の開発期間を経て、量産化を実現したVCRエンジンを特別に展示した。同エンジンはリンクとモーター(アクチュエーター)を使ってピストンの上下位置を柔軟に動かす日産独自の機構を採用することで、走行状況に応じてエンジンの圧縮比を一定範囲で変えられる。この高い技術により、高い燃費効率と走行性能を可能にした。専門的な技術ではあるが、小学5年生でも概要を理解できるように、従来エンジンと比べた動的な模型で説明する。ミュージアムを発足したのも人材育成が一つのきっかけだったという。

夢の技術とされたVCRエンジン

また、ミュージアムが入るゲストホールの建物は歴史的に価値がある建造物として評価される。同ホールは1933年に現在の横浜工場の地に創業した日産の旧本社事務所であり、68年に東京・銀座に当時の本社を移転するまで活用されていた。横浜市内で戦前期の工場事務所ビルとしては希少な存在であり、部屋の窓ガラスなどは今では復元不可能とされる。同市が歴史的建造物に認定したほか、経済産業省から近代化産業遺産にも認定された。

入場者は家族連れや外国人、自動車業界で働く若手従業員など幅広く、年間2万5000人にも上る。日産グループとしては新入社員研修でも見学するほか、年に数回は地域との交流などで活用する。同ミュージアムを担当する大村優氏は「今後は日産の技術をストーリーで伝えられるミュージアムにしていきたい」と話す。

【メモ】▽開館時間=10―16時▽休館日=日曜日(祝日などはホームページを参照)▽入場料=無料▽最寄り駅=JR京浜東北線「新子安駅」、京浜急行線「京急新子安駅」▽住所=横浜市神奈川区宝町2▽電話番号=045・461・7090

日刊工業新聞2020年1月31日

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