大幅赤字のスマホ決済還元合戦、それでも携帯大手が辞めない理由

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携帯電話大手傘下のスマートフォン決済が2月から大規模還元を相次ぎ始める。利用回数が多い小売り店舗でお得感を打ち出し需要を喚起。ローンや投資など金融サービスも可能にし、日常生活に欠かせないスーパーアプリ化を目指す。背景にあるのは、今春商用化する第5世代通信(5G)。高速大容量通信で膨大なデータを分析する時代を迎える中、スマホ決済で得られる購買履歴を多く持つ携帯会社ほど競争力が高まるからだ。(取材=編集委員・水嶋真人)

【ペイペイ首位】

「(消費者が)キャッシュレス決済を選ぶ要因は三つある。利用可能店舗数の多さ、安全性とポイント還元だ」。28日、都内でauペイの強化策を発表したKDDIの東海林崇専務は、2月10日から3月29日まで利用者1人当たり最大7万円分のポイントを還元する大型キャンペーン実施の狙いをこう語る。還元総額は毎週10億円。auペイの決済額の20%をポイント還元する。すでに、ソフトバンクグループ傘下のペイペイ(東京都千代田区)は2月1日から日高屋、すき家、吉野家といった飲食チェーン大手を対象に支払額の40%還元を発表している。

NTTドコモのd払いも1月28日からファミリーマートでdポイントを通常比40倍、2月3日からローソンで同20倍還元する。

ユーザー数2300万人超と主導権を握り始めたペイペイは「3月にスーパーマーケットを対象としたキャンペーンを行う」(中山一郎社長)。auペイも「(資本業務提携する)ローソンと別のキャンペーンも検討中」(東海林専務)としており、利用者獲得に向けたキャンペーン合戦は今後も続く。

【ローン機能も】

スマホ決済アプリでローンや投資を行える機能追加も進む。ペイペイは20年中に各金融機関と連携し、ローンや投資、後払い、保険などの金融サービスを始める方針を打ち出している。

KDDIは2月4日に「auウォレットアプリ」の名称を「auペイアプリ」に変更。同アプリ内でスマホ決済とローン、投資ができるようにする。飲食店の事前注文やタクシーの配車予約も追加する予定だ。

一連のキャンペーンや設備投資により、各社のスマホ決済事業の大半は大幅な赤字となる。それでもキャンペーンを打ち続けるのは、スマホを介したあらゆるサービスを自社グループ内で提供する「デジタル経済圏」が携帯各社の競争源になるからだ。デジタル経済圏で提供するサービスに不可欠な存在となるスマホ決済にひも付く情報を多く持っている携帯会社ほど競争力を増し、国内シェアを高められる。

【楽天との戦い】

そのためにも日常生活に欠かせない各種機能をスマホ決済アプリ上で提供することで“スーパーアプリ”化し、クレジットカードからキャッシュレス決済の主役の座を奪うことができるか。この結果が1830万人のクレジットカード会員を持ち4月に携帯事業へ本格参入する楽天との戦いにもつながることになる。

日刊工業新聞2020年1月29日

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