折込チラシのクーポンを切り取って販売。“節約心”をくすぐるECサイト

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO) 食料費の節約を約束する「TheCouponClippers」

「節約」というキーワードは日本だけでなく米国の消費者にとっても刺さる言葉だ。Amazonよりも低価格であることを前面に出して、この夏オープンしたマーケットプレイス「Jet」もその例の1つだ。

 しかし価格を重視する消費者層にターゲットを合わせた商売は厳しい。どこよりも安い価格で売るためには自らの利益を限界まで削らなければならない。しかももっと安値で販売する競合店が現れれば顧客を奪われてしまう。Jetが価格で勝負する道を選べたのもその裏に豊富な資金力とビジネスの実績があるからこそで、普通のECサイトではとてもその真似はできない。

 では、資金力も実績も乏しい個人や中小企業が「節約意識の高いミドルクラスの消費者」をターゲットとしてeコマースに参入し、ビジネスを築いた例はないのだろうか?

 インターネットを探してみたら、「TheCouponClippers」http://thecouponclippers.com/という面白いECサイトを発見した。トップページで「食料品にかかる費用を毎週45〰80%節約できる」と約束している。一体、TheCouponClippersはどのようにしてその約束を実現し、ビジネスを築いているのだろうか?

 米国では依然としてクーポンの85%以上は紙の印刷媒体

 サイト名が示す通り、TheCouponClippersが扱っているのは「クーポン」である。ただしグルーポンが扱っているようなグルメやレジャーに関係する施設やサービスをお得に利用するためのクーポンではなく、一般のスーパーや食料品店などで利用できる食料品や日用品の割引クーポンだ。

 例えば、画像1の左側のクーポンはSpaghettiOsというブランドのパスタ製品をどれでも4個購入すれば、75セント(約90円)の割引を受けられる。右側のクーポンならば、FarmRichというブランドの特定の製品を1箱購入すれば、1.25ドル(約150円)の割引を受けられる。それぞれは少額だが、こうしたクーポンが10枚もあれば、1回の買物で1000円以上の節約ができる。

 この種のクーポンは製品の販売元がマーケティングの一環として発行しているもので、通常、それだけで販売されることはない。一般的な入手経路は新聞や雑誌などの折り込みである。デジタル版のクーポン券が発行されるようになった現在でも、米国では依然としてクーポンの85%以上は紙の印刷媒体によって配布されている。

 特にクーポンが多く入っているのは新聞の日曜版だ。新聞の定期購読を止めた後も日曜日だけはクーポンを目当てに新聞を購入するという人も少なくない。熱烈なクーポンファンになると、同じローカル紙の日曜版を2部、3部とまとめて購入する。買物の主体はクーポンで、新聞はオマケというわけだ。

  非売品で転売禁止のクーポンをなぜ販売できるのか?

 しかしクーポン目当てで日曜版の新聞を買っても、欲しい商品のクーポンが入っているかどうかは中身を見るまで分からない。週によっては「ハズレ」ということもあるだろう。

 そこでTheCouponClippersでは日曜版の新聞を大量に購入し、付属しているクーポンを1枚1枚切り抜いて個別に販売している。顧客はほとんど中身を読まない新聞に投資することなく、欲しいクーポンだけを効率的にピックアップして必要な枚数を入手することができ、切り抜く手間も要らない。それがTheCouponClippersの売りなのだ。

 しかしこの種のクーポンは本来、非売品であり、転売も禁止されているはずだ。TheCouponClippersはどうして堂々とクーポンを販売できるのだろうか?


海外ECサイト事例に学ぶ「売上アップのノウハウ」

明 豊

明 豊
09月19日
この記事のファシリテーター

節約心をくすぐるには、そのサービス業者の儲け主義やいやらしさが見えてはいけない。その点はとても難しいことだろうが、この「TheCouponClippers」はうまくコントロールできているのだろう。個人的には紙の媒体というか印刷物の可能性をちょうど考えていたところだったので、とても興味深い事例だった。

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