“中国倒産”は減少傾向も、再び警鐘を鳴らした医療機器メーカーの売り上げ急落真相
医療機器の製造および販売を主業としていたヒロセ電子システムは、2019年11月12日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は1964年に創業し、採血した血液を分析する多機能小型自動血液分析装置を主力に、便潜血分析装置など医療の先端技術を支える医療機器のほか、肌の健康を保つイオン導入器などの家庭用機器まで扱っていた。
68年に法人改組して以降、順調に売り上げを伸ばし、90年代後半には売上高50億円を突破。この時期に人件費が低廉であった中国に進出し、製造した商品を日本へ輸出すると同時に中国に工場を置く日本企業への納入も開始。国内工場のほか、中国工場という二つ目の柱を得て安定的な売り上げを誇っていった。
しかし、その後、中国における得意先が製造拠点を東南アジアにシフトさせたことで、同社の現地法人の売り上げが半減。そうしたなかで中国の急激な経済発展の影響で中国の人件費が高騰し、現地法人の資金繰りを圧迫していた。同社は現地子会社の資金繰り改善のため毎年数億円の資金支援を行う必要が生じ、さらに部品提供も行っていたが、直近2年は毎月5000万円程度の部品代金の未回収も発生する事態となっていた。
これらの影響で、19年に入り、同社においても資金調達が厳しくなり、金融機関が口座の出金停止措置を講じたことで、さらに資金繰りが悪化。同年7月頃から取引先に対し、売掛金の前倒し入金を依頼していたが、資金繰りの抜本的な解消には至らず、出金停止の解除も認められなかったことから事業停止に至った。
今回のようなチャイナリスクを主因とする倒産件数は16年の120件をピークに減少しているが、昨今は中国における景気減速のほか、米中貿易摩擦問題も大きく取り上げられている。今後、日本企業への影響も懸念されおり、改めて注意が必要な要素の一つと言えるだろう。
(帝国データバンク情報部)<関連記事>
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