「男性社員の育休取得率100%」を実現した地方企業の危機感
サカタ製作所(新潟県長岡市、坂田匠社長、0258・72・0072)は、男性従業員の育児休業取得を奨励している。2018年の取得率は100%だった。取得にあたって従業員の不安を取り除く仕組みを構築し、部下の育休取得を上司の評価項目にしたことなどが奏功した。小林準一取締役は「自社の状況に合わせてシナリオを作って取り組むことが大事だ」と力説する。背景には地方企業の危機感があった。(取材=新潟・山田諒)
18年は男性従業員6人の家庭に子どもが生まれ、育休を6人全員が取得した。17年は8人が生まれ、4人の男性従業員が取得。18年の取得率は前年に比べて倍増した。
サカタ製作所は子どもが生まれた男性従業員を部下に持った場合、その従業員の育休取得の有無が上長の評価基準の一つになっている。育休取得前には本人、上司、役員が同じ机の前で話し合い、会社も休業スケジュールや休業中の給与シミュレーションの結果を提示する。
このようにすることで従業員が安心して休んでもらえる体制を整えている。小林取締役は「社会保険料などの面で得になる休業の取り方がある。そこも知らせることで従業員の不安を払拭(ふっしょく)できることが分かった。シミュレーションは欠かせない」と強調する。
育休の取り組みに力を入れるのには理由がある。同社が本社を置く地区には鉄道路線が通らず、高速道路の出入り口から時間がかかる。本社が交通の便があまりよくない場所にあるだけに「多くある企業の中から、当社に来てもらうには何か魅力的な施策を展開する必要があった」(小林取締役)という。
同社は14年にワークライフバランスの勉強会を実施し、坂田社長が「残業削減に取り組む従業員を高く評価する」と宣言。社内風土に変化が訪れた。育休取得促進のため小林取締役をはじめ、当時の総務担当者を中心として制度構築に向けたシナリオを作成した。
その後、坂田社長の陣頭指揮で男性従業員の育休取得が進んだ。「育休ほど事前に業務を別の従業員に引き継ぎやすい休業はない。子どもが育つフェーズにおいて必要となる休業だから、いつごろ必要になるかが想定できる。そこから逆算すればいいとの考えが広まった」(同)として社内に育休が定着した。
自社実施のアンケートでは同社が「従業員満足度95%超」との結果となった。18年には厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2018」において両立支援部門でグランプリも受賞した。「毎日、誰かが育休している状態だが、仕事は回せている。それくらいやらないと、育休は定着しない」(同)と断言する。
その上で、小林取締役は「まず自社の現状を把握し、同制度を導入するかシナリオを作った上で、社長にも理解を得てもらうことが大事だ」と自社の経験を基に訴える。同社は育休以外の福利厚生にも取り組む。今後も従業員に優しい取り組みを進めることで士気の向上につなげ、さらなる発展を目指す。