中小企業の光る技術、主要路線の「スマートホームドア」に

連載・最終回

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グループ会社が一からホームドアを設計し、中小企業とタッグを組み、完成させた―。JR東日本の会議で副社長(当時)の川野辺修はJR東日本メカトロニクス(JREM)の取り組みを絶賛した。安全統括を管理する川野辺は設置しやすいホームドアの必要性を誰よりも認識していた。JREMの取り組みも試作から見守っていた。

先行きの不透明性が増す今、組織の大小を問わず、変化を恐れない精神が求められている。「ホームドア開発はJREMにとって、(変革の)一歩になった」。不思議な巡り合わせで2019年6月にJREMの社長に就任した川野辺はプロジェクトの意義をこう語る。

16年末に新型ドアの町田駅での試行開始後、関係者にはうれしい誤算が続いた。「スマートホームドア」と名付けられた新型ドアは、京浜東北線の蕨駅への正式な設置が決まり、19年度末にも実用化される。中央総武線の亀戸駅、小岩駅での基礎工事も始まった。JR東は今後、ホームドア設置を、軽量で工期短縮可能なスマートホームドアを中心に進める方針だ。

開発の最前線に立ち続けたJREMの村木克行は「JR東の経営陣の決断が大きかった」と語る。これまでにないモノをこれまでと異なる枠組みでつくる。巨大組織が前例に縛られず柔軟な発想を許容し、中小企業の光る技術を高く評価したことが、新しいホームドアを生んだ。

「蟻」は「象」になれないし、「象」も「蟻」にはなれない。生態が異なる「象」と「蟻」が、お互いを尊重する姿勢が革新につながった。

JREM常務でプロジェクトを統括した村川由之はこう振り返る。「誰も経験したことがないプロジェクトを立ち上げること自体に価値があった。万が一、失敗しても財産になると思っていた」。

開発を引っ張った村木は村川の言葉に頷きながらも、こう付け加えた。「村川さんと一点だけ違うのは、私は成功させなきゃと思っていたし、成功すると思っていましたよ」。

(取材・栗下直也)
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日刊工業新聞2019年12月24日

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