批判多くも…小泉進次郎環境相が示す“抜群の存在感”
小泉進次郎環境相は、発信力で世論を動かすよりも「実績づくり」重視にかじを切った。就任から3カ月以上経過したが、政府内の調整に阻まれて温暖化対策で大胆な政策を打ち出せないためだ。そこで、他省や地方自治体を巻き込んで再生可能エネルギーの導入を増やそうとしている。気候変動対策への機運が盛り上がった実績を示し、「現状追認」の格好で政策を変える作戦だ。
環境省は2030年までに、購入する電力全量を再生可能エネルギーにする行動計画をまとめた。20年度は新宿御苑(東京都新宿区)など同省が所管する全国8施設で先行して再生エネ100%を達成する。この時点で同省全体の再生エネ比率を最大15%にする。21年度は6施設を追加し、40%に引き上げる。
小泉環境相は他の省庁にも再生エネ購入の動きが波及すると確信する。12月上旬、環境省が入居する庁舎内の売店でレジ袋を廃止すると、内閣府や国土交通省にもレジ袋廃止が広がった実績がある。
こうした「実績づくり」が小泉環境相の戦略だ。二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指す“脱炭素”宣言をする自治体が増えている。小泉環境相が呼びかけており、31の自治体に広がった。
12月の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で小泉環境相は目新しい政策を打ち出せず、日本は海外から気候変動対策に消極的と映った。石炭火力発電からの脱却や温室効果ガス排出削減目標の強化は環境省に決定権がなく、発言に勢いがなかった。
この経験から小泉環境相は「真っ正面からだと難しければ、現実を変える」と語る。脱炭素宣言した31の自治体の人口は4700万人となり、日本の総人口の37%をカバーする。存在感を高めた自治体からの再生エネ普及を求める声が大きくなれば、政策を変える障壁が下がると読む。
20年、各国は温室効果ガス排出削減目標を国連に再提出する必要がある。国連は目標強化を求めており、日本も30年度26%減(13年度比)の引き上げを迫られる。期限は2月となっている。目標を上げられるのか、早速、作戦の真価が問われる。