避難所に行くストレス解消する、トヨタホームが提案する耐災害住宅の仕組み
強力な台風が相次いで直撃した2019年の日本列島。電力や水道といった社会インフラ機能が停止し、中でも台風15号と19号による停電被害の総数はピーク時で100万戸を大きく超えた。家屋の被害が小さくてもインフラ復旧までは避難所での生活を余儀なくされるケースも多く、生活再建を急ぐ被災者の負担になっている。
【車から給電】
こうした課題の解決に向けて、トヨタホーム(名古屋市東区、後藤裕司社長、052・952・3111)は、防災・減災システムを装備した住宅の提案に力を入れている。山根満取締役技術開発センター長は「災害発生後も住み続けられるよう、電力や水をいかに確保できるかが求められている」と指摘。住宅のレジリエンス(復元力)を訴求し、安心・安全な住まいの新機軸を打ち出した。
11月に愛知県豊田市内の住宅展示場で、防災・減災対策を施した新たな一戸建て商品の一般公開を始めた。V2H(ビークル・ツー・ホーム)システムやリチウムイオン蓄電池、飲料水タンクなどを装備し、「災害後も安心して暮らせる家づくり」(山根取締役)にこだわった。
V2Hシステムはデンソー製で、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など、電動車に蓄えられた電気を住宅への給電に用いる。最大出力は約5・9キロワットで、家庭の全電力をまかなえるという。電圧も200ボルトまで対応し、空調や電磁誘導加熱(IH)クッキングヒーターなども使える。
山根取締役は「家まるごとの電力に対応し、普段の暮らしが継続できる」と強調。トヨタ自動車の「プリウスPHV」の場合、ガソリン満タンで最大約4日間供給できる。
【ポンプで取水】
リチウムイオン蓄電池や家庭用燃料電池「エネファーム」では、停電時の電力供給を商用電源から非常用電源に自動で切り替えられるシステムを開発し、来春に発売する計画だ。切り替えは手動で行う必要があったが「操作の仕方が分からない」(山根取締役)といった声もあり、新システムの投入で利便性を高める。
飲料水タンク「マルチアクア」は120リットルの安全な飲料水を貯水でき、断水時に足踏みポンプを利用してキッチンなどの蛇口から取水する。床下にも収納可能な大容量・省スペースを実現しつつ、4人家族で約3日分の飲料水や生活用水を確保できる。
トヨタホームはこれまで、強靱(きょうじん)な構造体や錆に強い鉄骨構造、高い防耐火性能などで、災害発生時や発生直後に威力を発揮する住宅機能の開発を進めてきた。今回、災害発生後の対策にまで機能を拡大したことにより、災害対応住宅をフルラインアップで提供できる体制を整えた。
「避難所に行くストレスや家を空ける不安を解消したい」と山根取締役。相次ぐ台風被害などでこれら対策への問い合わせも増えているという。幅広い顧客ニーズを満たせるよう、新築だけでなくリフォームにも対応していく考えだ。(取材=名古屋編集委員・長塚崇寛)