JDIが「白山工場」売却へ、シャープと交渉
ジャパンディスプレイ(JDI)は、中小型液晶パネルを生産する白山工場(石川県白山市)の売却に向けてシャープと交渉に入った。2020年春の合意を目指す。売却額は800億―900億円になるとみられる。JDIの業績悪化の最大要因であった“低稼働工場”の切り離しが実現すれば、経営再建へ大きく前進することになりそうだ。
JDIの白山工場は約1700億円を投じて16年末に稼働を始めた最新拠点で、米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」向けに液晶パネルを製造していた。ただ、同社からの受注量が当初の想定を下回り、固定費が経営を圧迫していた。結果、19年7月から工場の操業を休止している。
台湾・鴻海精密工業傘下のシャープは主要顧客のアップルからの要請を受け、白山工場の買収へ動きだしたもよう。アップルの液晶パネル調達先は韓国・LGディスプレイとJDI、シャープが中心だ。LGは今秋発売のアイフォーン新機種から有機ELパネルの供給も始めた。
アップルはLGから有機ELパネルを調達する一方で、LGへの液晶パネルの発注は減らす意向とみられ、アイフォーンやタブレット端末「iPad」で必要な液晶パネルを白山工場やシャープの亀山工場(三重県亀山市)などから追加調達する構想を打ち出したようだ。
ただ、白山工場売却はアップル主導の色彩が強いため、シャープとJDIの交渉が決裂する可能性はある。工場の譲渡金額など、条件で折り合わない事態も想定される。またJDIは、自社の有機EL生産に白山工場を活用する案なども引き続き並行して検討する。
JDIは20年3月までに独立系ファンドのいちごアセットグループから最大900億円を資金調達する方向。いちごアセットも、シャープとの白山工場売却交渉を了承しているもよう。いちごアセットと政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の金融支援により、1016億円の債務超過(19年9月末時点)は解消できるめどが立った。残る懸案だった白山工場の売却がまとまれば、JDIの経営再建へ強力な追い風となる。