JDIに待ち受けるシャープの二の舞。外資に翻弄され再生ままならず

「日の丸液晶」の落日

シャープの戴正呉会長兼社長
 日本のお家芸だった液晶パネル産業がついに家元の手を離れる。ジャパンディスプレイ(JDI)は今週前半にも中国・台湾企業連合からの出資受け入れを決め、その傘下に入る見通しだ。一足早く台湾傘下に入ったシャープ。その現状を見れば、険しい道のりが待っている。

 液晶一本足打法があだとなって業績が悪化し、16年8月に台湾・鴻海精密工業の傘下に入ったシャープ。鴻海の力を借りて経営再建を進めてきた。18年3月期連結決算では、鴻海の販売網を生かして中国市場で液晶テレビの販売を伸ばし、14年3月期以来4期ぶりに当期損益を黒字転換。株主への配当も再開した。

 16年以降、電子部品を手がける三原工場(広島県三原市)など国内生産拠点の閉鎖・集約を断行。調達費削減や合理化などリストラ効果で、17年3月期決算では早くも営業損益を黒字転換させた。

 華麗なる復活を遂げたかに見えるシャープだが、先行きに暗雲が立ちこめる。19年3月期は増収増益を見込むが、テレビ販売の減少などを受け、すでに2度業績を下方修正した。テレビ販売の状況次第では再度の下方修正の懸念もはらむ。

 さらに、朝令暮改とも取られかねない鴻海の方針転換に振り回される部分も目立つ。その一つが17年1月に鴻海の郭台銘会長がぶち上げた米国の液晶パネル工場建設構想。発表後、人材不足やパネル市況の悪化を受け一転、建設を凍結。19年に入り再び建設継続を発表するなど、計画変更を繰り返している。

 中国での液晶テレビ販売も、販売台数を伸ばして好調さをアピールしたが、価格設定を見誤り、シャープ製品に安物イメージが定着。結果、テレビ販売が低迷した。18年秋、戴正呉会長兼社長も「量から質への転換」を掲げ、収益改善を進める方針に転換した。

 液晶パネルの主力工場である亀山工場(三重県亀山市)と三重工場(同多気町)の実態も見えない。

 戴社長は「シャープは技術を持っている。これからも液晶とソーラーに投資する」とシャープの技術力に期待を込める。ただ、構造改革が一段落し、液晶に代わる業績ドライバーも見当たらない。20年3月期に売上高3兆2500億円、営業利益1500億円と設定した中期経営計画の達成も危ぶまれている。

ゾンビ企業のレッテル


 JDIは12年に当時の産業革新機構(INCJ)主導で日立製作所と東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合して発足した。当時同じく日の丸連合参加を打診されたシャープはそれを断り、結局は16年に台湾・鴻海精密工業の傘下に入った。INCJの元幹部は「もともとJDIをつくったのはアップル依存度を下げるために設立した。それをまた元に戻したら、おかしくなるに決まっている」とあきれる。

 アップル向けの売上比率は12年度に20.9%だったが、年々その比率は大きくなり、開示されている直近17年度時点で54.9%まで上昇している。スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」などのアップル製品が世界市場を席巻していた期間と重なってはいるが、過半を占めるほどの依存度はやはり歪(いび)つな収益構造と言わざるを得ない。

 「今のJDIは設立直前の東芝の液晶事業と全く同じだ」(INCJ元幹部)と既視感が強い。東芝はアップル向けの売上比率が高く、経営不振の一因とみられていた。「東芝はアップルから資金支援を受けて最先端の設備に投資しまくったが、アップルからの発注が止まって急激に収益を悪化させた」(同)と7年かけて同じ間違いを繰り返した格好だ。

 経済産業省はJDIへの支援に対し、諦念の境地を見せる。筆頭株主を務めるINCJについて「コモディティー(汎用品)で競争する企業を無理して延命するのが目的ではない」(経産省幹部)と指摘する。

 12年、経産省は国産液晶技術の存続を目指し、JDIの発足を主導した。だが価格競争に苦しみ、官僚らが描いた当初の成長シナリオとは異なる展開が続いた。さらにアップル製品の販売不振も追い打ちをかけた。「スマホ向けのビジネスはアップルに左右されるため、難しい」(同)と悔やむ。

 省内には“ゾンビ企業の救済機関”というレッテルを回避したい思惑もある。JDIへの支援を漫然と続ければ、批判が強まる恐れがあった。すでに今国会でもゾンビ企業の救済に懸念する声が相次ぐ。

 ある政府関係者は「液晶の生産はベトナムやバングラデシュなどで拡大している。中国・台湾勢がJDIを傘下に収めても今度は彼らが苦労するだけだ」と強がる。政府の意向で再編やリストラを繰り返したJDI。今度は国際競争の荒波に漂流することになる。

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日刊工業新聞2019年4月5日の記事から抜粋

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