「あ、それ人工知能なんだ」で、思考がとまっていませんか?もう少しだけ人工知能に詳しくなろう
「あ、それ人工知能(AI)なんだ」で、思考がとまっていませんか?
ネットサービスや家電製品の「AI搭載」というキャッチフレーズが目に付いたり、ロボット展のようなテクノロジーの展示会で「AIを使った次世代のナントカカントカ」といったフレーズが耳に入るといったことが当たり前になりました。
ただ、一口にAIと言っても、ある具体的な技術を指している訳ではありません。
この記事は、AI関連のサービスや製品に触れたときに、「そのAI、具体的には何をしてる?」と少し踏み込めるようになる“きっかけ”くらいになるかもしれません。
「AI」はたくさんの技術や分野を内包する言葉
AIという言葉はとらえどころがないかもしれません。というのも、関連する様々な要素技術を総称した言葉だからです。マーケティング的な言葉だとも言われています。また、AIの研究には、経済学や心理学のように、ある特定の研究領域が存在しません。様々な学問領域や産業分野を横断し、社会的ニーズや情報処理技術の向上などが掛け合わさりAIの発展があります。
現在、AI研究には大きな二つの方向性があります。ひとつは「知能の再現」。人間の思考や認知のメカニズムを明らかにする研究です。もうひとつは「ビッグデータ」です。この20年ほどで発達した新しい分野です。人間やコンピュータの能力では到底捉えきれない世の中のありとあらゆるデータを処理し、今まで見えていなかったパターンや事実を浮かび上がらせる技術です。
いくつかの応用例と要素技術
実用化されているAIを要素技術に分けていくつか紹介します。スマホの顔認証や、空港の手荷物検査装置には「画像認識技術」が使われています。登録した画像データや、膨大な数の画像から学習したデータを元に、与えられた画像が何かを判定します。
ちなみに、4×4画素の画像ならば、
1 1 1 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 0といった感じで、数値に変換して処理します。
スマホに搭載されているSiriなどの音声対話システムには、「音声認識技術」や「自然言語処理技術」が使われています。人間が扱う言葉は意味や解釈があいまいで、機械がきちんと解釈することは長年の難問でした(今でも難しいようですが)。
ゲームへの応用も進んでおり、ゲーム内のキャラクターが自律的な振る舞いをしたり、プレイヤーの習熟度にあわせて強くなったりするようなアルゴリズムが実装されています。一般的には「ゲームAI」と呼ばれています。
こういった要素技術は、ビッグデータを扱えるようになった情報処理技術の発達や、「機械学習」というAIのアルゴリズムをAI自身で改善する技術の向上から日々改善しています。
人間の常識は、AIには理解できない
世の中でもっと利用されるために、AIが解決しなければならない問題があります。代表的なものに「フレーム問題」があります。これは、人間の常識はAIには分からないという問題です。AIが理解できない典型的な常識の例には「ペンギンは飛べない」「持っている物を放せば落ちる」「生き物は必ず死ぬ」などがあります。
私たち人間が扱う常識は膨大で、全てをAIにプログラムするのは不可能です。常識を理解できないAIを応用すると、思わぬところで問題が生じるかもしれません。例えば「接客ロボットが命令口調になる」や「自動運転車がショートカットのために川を渡ろうとする」などなど。
問題には他にも「計算すべき情報量の膨大化への対応」や「安全性の保証」といった重大なものがあり、解決が待たれます。まだまだ、”万能なAI”の実現は遠そうです。
「2019国際ロボット展」特設サイト
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【参考文献】
「トコトンやさしい人工知能の本」辻井潤一監修、日刊工業新聞社、2016年
「本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI」山田誠二著、日刊工業新聞社、2019年