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宇宙でたんぱく質を培養、ISSを利用してビジネスだ!

国内の民間企業による宇宙の商用利用が始まる。有人宇宙システム(JAMSS、東京都千代田区、古藤俊一社長、03・3211・2002)が日欧2社と提携し、国際宇宙ステーション(ISS)の欧州実験棟を使って行うたんぱく質の結晶生成サービスだ。4日に米社の宇宙輸送ロケット、スペースXで顧客から預かった試料を初めてISSに送り、1カ月かけて培養する。一連のサービスは「Kirara」と名付けてパッケージ化し定期的に行う。

同事業は手続きの手軽さや試料の解析のし易さなど、サービス業の観点で顧客ニーズを考慮した。日米欧で運用するISSの日本実験棟「きぼう」を開発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)も民間企業を含めて同様の実験を行っているが、「内容の審査や期間の制約が多く、早く結果がほしい企業のニーズと離れている」(古藤社長)という。

宇宙培養は、国際的な宇宙商業サービスを行うベルギーのスペース・アプリケーションズ・サービスがISS内に持つラックを利用する。さらにたんぱく質解析技術を持つコンフォーカルサイエンス(東京都千代田区)が、宇宙から戻した試料からたんぱく質を取り出して冷凍、顧客が解析しやすい状態にして納品する。宇宙に送る結晶化装置も自社開発した。試料チューブを搭載する箱と恒温槽を一体化した約10立方センチメートルの装置で、宇宙飛行士はラックに取り付けるだけでよい。温度制御などの保全作業はすべて地上からJAMSSが行う。

内外から応募があった7企業・団体の約80本の試料を宇宙に送る。参加するのは武田薬品工業、創薬ベンチャーのインタープロテイン、大阪大学発ベンチャーの創晶など。

JAMSSは「きぼう」の地上管制や宇宙飛行士の訓練を主力業務とするが、ISSは早ければ2024年にも運用停止する。このため「JAXAに頼らず将来も継続できる事業」(古藤社長)として、汎用性の高いパッケージ型ビジネスを構築した。欧米では宇宙機関が大家となってISSを民間に貸し出すショッピングモール型の宇宙利用が進んでいる。

このためISS終了後も官民による複数の宇宙ステーション計画が進められており、将来はこうした施設に移行してサービスを行う。

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