衛星画像やロケット…宇宙ビジネスに挑む商社たちの狙い目

大手の動きが本格化

 宇宙ビジネスへの期待が高まる中、大手商社の動きも本格化してきた。三井物産は、これまでに地球観測用の超小型衛星を打ち上げる東京大学発ベンチャーや衛星打ち上げ支援事業を手がける米国ベンチャーに出資。宇宙航空研究開発機構(JAXA)による国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星放出サービスの民間事業者にも選ばれた。宇宙空間を通じたビジネスの創出に挑む。(浅海宏規)

三井物産、地球観測画像データ活用


 三井物産が出資する東大発ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)は2018年12月、複数の地球観測衛星を軌道上に展開し、地球を毎日観測するインフラ「アクセルグローブ」の衛星初号機を打ち上げた。

 アクセルグローブは、衛星から送られてくる地球観測の画像データを基に、顧客が求める情報に加工して提供する。22年までに、軌道上に打ち上げる衛星を順次増やし、同じ地点、同じ時刻で時間変化を観測できるようにする計画だ。

 もともと三井物産は鉱山開発をはじめ、資源系ビジネスに強みを持つ。ワンショットで状況が把握できる点で地球観測の画像データは非常に価値がある。

 あわせて、こうしたサービスの普及に向け、三井物産は今夏から本格的に自治体や民間企業向けに提案を始めた。農業や森林の状況変化、港湾の混雑状況、平常時と災害発生時の比較、街づくりの変化など、想定する用途は多岐にわたる。

 宇宙から地球を観測する地球リモートセンシングにおいて、アクセルグローブの解像度の精度は中間クラスにあると考えており、三井物産の永東尚ICT事業本部インターネットサービス事業部新事業推進室チームリーダーは「ライバル企業が少ない領域だろう」と見る。

 ただ、画像だけを自治体などに提案しても「それを人の目で見て監視するのは現実的ではない」と阿部雄飛同事業本部インターネットサービス事業部新事業推進室長は指摘する。例えば、人工知能(AI)を活用して画像を自動検出する仕組みなど、今後、付加価値を見いだしながら、どこまでサービスを広げることができるかが注目される。

三井物産、打ち上げサービス本格化


 これまで宇宙ビジネスはロケットで打ち上げた衛星を活用し、通信・放送や気象状況の把握などの用途が中心だった。近年では小型化に伴う低コストでの打ち上げが可能になり、月面への資材・機材の輸送や有人宇宙飛行サービスの拡大が期待されている。

 米国の衛星産業協会(SIA)によると、2017年の宇宙産業の市場規模は約2686億ドル(約29兆円)で、このうち衛星サービスが1287億ドル(約14兆円)、打ち上げサービスは46億ドル(約4900億円)を占める。

 数キロ―数百キログラムの小型衛星は「開発費が大型衛星の数百億円に対し、小型衛星は数千万円から数億円程度で済む」(三井物産戦略研究所技術・イノベーション情報部インダストリーイノベーション室の金城秀樹シニアプロジェクトマネージャー)ため、今後も打ち上げサービス関連市場は拡大するとみられる。

 三井物産は、衛星打ち上げ支援事業の米国スペースフライト・インダストリーズ(米シアトル市)に出資している。同社は民間ロケットで空いたスペースに小型衛星を載せる「マッチング」サービスを展開する。

 スペースフライトは世界各国の衛星打ち上げ会社と協力関係を構築しており、小型衛星を打ち上げたい企業に空いたスペースを紹介し、販売している。ロケットの開発会社にとっても、余剰スペースを減らすことで、打ち上げにかかるコストを削減できる。

 三井物産においてもこの「マッチング」先となる販路開拓を進めている。重枝和冨モビリティ第二本部航空・交通事業部航空事業室室長補佐は「エンタテインメント関連や、宇宙空間で装置や部品がどのように動作するかを実証したい機械メーカーなどに提案していきたい」といい「5―10年先には規模感のあるビジネスへ成長させたい」(重枝室長補佐)と意気込みを語る。

 三井物産は宇宙航空研究開発機構(JAXA)のISS日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星の放出に関する事業者に選ばれており、衛星放出事業は今年度から本格化させる考えだ。宇宙空間の活用に向けた挑戦が続いている。

日刊工業新聞2019年7月31日、8月1日

  

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