妄想は人生の原動力!採用改革は楽天球団の優勝と同じプロセスにある
ビズリーチ・南社長が語る“ダイレクトリクルーティング”にたどり着くまで
採用は会社の健康診断。可視化すれば日本は元気になる
―球団を辞めてから、どのようにしてダイレクトリクルーティング(DR)へとたどり着いたのですか。
「辞めたことと起業とは直接関係ありません。僕は楽天という会社にいたけどインターネット事業をやっていなかった。でも自然と情報が入ってきますよね。高校3年生の時に一人でスタンフォード大学へ見学に行ってびびった。インターネットは僕らの時代の『産業革命』だと。だから辞めてMBAに行く選択肢も考えたんですが、2年間はインターネット事業をやってみようと自分を正当化したんです。ちょうど日本の転職活動の非効率さを自分の体験から感じていて、やっぱりそこからは直感ですね」
「米国も30年前までは終身雇用。僕が大学生のころから流動化が始まって、自分自身もキャリアを選んでいくことを価値として味わい、楽しかった。日本の求人市場がブラックボックスになっているボトルネックは、企業側が『こういう人材が欲しい』ということを主体的に表現しにくいからだと思ったんです。だから働く側も選択肢が増えない。インターネットの本質的な力は、より多くの人を早く安くつなげていくこと。楽天が小売業でやったEコマース(電子商取引)によってすべて可視化される効果と、ビズリーチは似ていると思います」
「でもEコマースに比べこの分野は15年は遅れている。Eコマースは買う方は柔軟ですが、売る方が慣れていない。なぜ楽天が売り手へのコンサルタントをあれだけ厚くしているか。三木谷さんがよくおっしゃってる“エンパワーメント(人々と社会に力を与えること)”が必要。会社を作った当初はまだぼんやりとしていたんですが、すべてつながったんです。日本の雇用はこれから確実に流動化していく。それは断言できます。DRが21世紀の採用文化になれば日本は元気になる」
―最近は「地方」にも事業展開を広げていますが。
「地方創生のキーワードが出てくる前から力を入れていて、なぜなら大手企業の強者は最初に動く必要はない。『採用弱者』である地方の中小企業の中にも素晴らしい技術や商品がある。そういう会社で働く機会があることを求職側に知って欲しいし、『スタンバイ』という事業は、企業側の採用プロモーションツール。企業が自ら発信するには、会社が良くならないといけないし経営改善が進む。採用は会社の健康診断なんです」
30代は冒険。40代からが公式戦で世界を目指す
―会社を設立したのが33歳で現在は39歳。どんな30代を過ごすべきでしょう。
「人間40―50年働くとすると、僕の30代は冒険であり、練習試合。商売は40代からが公式戦で勝負する仲間ができた。よく両親からも『なんでドメスティックな仕事ばかりやるんだ?』と聞かれるんです。インターネット事業も比較的ローカル。でも日本で1番にならないとグローバルでも通用しないというのが僕の考えです。まだまだビズリーチは日本でも小さな存在。40代前半で一番になって世界を目指したい」
―直感を貫く上で大事にしていることは?
「妄想ですね(笑)。恋愛でもスポーツでも何でもいいんです。恋愛も最初から振られることをイメージして恋をしないでしょ。楽天球団を立ち上げる時も日本シリーズの最終戦のホームゲームで優勝するイメージを描いていた。胴上げされるのが星野監督までは想像してなかったですが(笑)。子どもの時は誰もがもっと直感で動いていたはず。大人になるプロセスの中で自分の中で勝手にリミッターをはめている。よく人から『ニヤニヤしているね』と言われるんですが、妄想しているんです。『世の中こう変わったらすごい面白いな』とか。妄想を実現するには、地道な努力しかありません」
―いつか大リーグの球団オーナーになりたいと。
「10歳の夢を諦める必要はないので、一生持ち続けるでしょう。この会社の延長線上にあるものではないですが、夢のような話でもない。僕の憧れの人が、シアトル・マリナーズの筆頭オーナーだった任天堂の山内溥さん。僕はカナダに住んでいたのでトロント・ブルージェイズのファンですが、ちなみに現在のオーナーはカナダの大手メディアです」