電力・メーカー相次ぎ参入、太陽光「第三者所有モデル」がアツい
電力会社やメーカーが、住宅に太陽光発電パネルを初期費用無料で設置できるサービスに相次いで参入している。10年間はサービス事業者がパネルを所有し、その後契約家庭に無償譲渡する仕組みで、「第三者所有モデル」と呼ばれる。初期投資を抑えられる手軽さを武器に、普及に挑む。(取材・戸村智幸)
都の助成も
新電力のLooop(ループ、東京都台東区)は新規事業として第三者所有モデルのサービスを始めた。嘉山準氏は「太陽光発電のハードルを下げたい」と狙いを説く。電力小売りやパネル製造から事業領域を広げる。
同社と電気契約を結ぶのが前提条件となる。同社がパネルを所有する10年間、契約家庭は発電予想量に応じて電気料金の割引を受けられる。この間、保守点検は無料だ。譲渡後は契約家庭は発電分を無料で使えるため、電気料金を節約できる。
同社が新サービスに乗り出したのは、東京都が初期費用無料の太陽光発電サービスへの助成事業を6月に始めたことが大きい。そのため、サービス対象は都内限定だ。助成金は発電出力1キロワット当たり10万円で、事業者から契約者に全額還元が義務付けられている。
事業者に利点
電力大手では、東京電力エナジーパートナー子会社のTEPCOホームテック(東京都墨田区)が2018年に初期費用無料で、月額制のサービスを始めて先行した。
京セラと関西電力の合同会社京セラ関電エナジー(京都市伏見区)は19年10月、京セラ製パネルを用いた初期費用無料サービスを始めた。三菱地所ホーム(東京都港区)は東京ガスと組み、自社の新築住宅を対象に第三者所有モデルのサービスを10月に始めた。東ガスがサービス事業者となる。太陽光発電の関連プレーヤーがこぞって参入したのは、事業者にも利点が大きいからだ。
初期費用を無料にして敷居を下げることで、契約を獲得しやすいのが第一にある。10年間は事業者の所有物なので、発電分の売電収入を得られる。パネルの保守点検は10年間は無償提供だが、譲渡後は保守点検収入が見込める。
選択肢が多様化
普及への追い風もある。9月の台風15号では千葉県内で停電が長期化したが、太陽光パネルの設置家庭は電力を確保できたことが注目された。
契約家庭にとっても利点がある。通常の購入方法と長期的なコストを比較することは必要だが、導入しやすいサービスの登場で、選択肢が多様化したと言える。