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下期の想定為替レート、「円高」修正相次ぐ。主要業界への影響は?

不透明な「米中」懸念

 上場企業の多くが2019年度下期(19年10月―20年3月)の円ドル相場を慎重に見通している。自動車、機械、電機の主要企業が19年4―9月期決算で示した下期の想定為替レートは、1ドル=105円と手堅く設定した企業が目立つ。期初に設定した19年度の想定レート(通期レート)を下期に円高方向に修正した企業も相次いだ。足元の相場は同108―109円台で安定しているものの、先行き不透明な米中対立などが世界経済に及ぼす影響を懸念している。

【自動車】トヨタ「為替影響、下期も大」

乗用車メーカーはマツダ三菱自動車を除く5社が19年度下期の想定為替レートを1ドル=105円に設定。各社の上期実績は同108―109円の範囲だったが、下期は同105―107円程度と円高基調を想定している。トヨタ自動車の近健太執行役員は「足元ではそこまで円高ではないが、為替影響は下期も大きいだろう」と警戒を強める。

 ホンダ日産自動車も為替影響などにより業績予想の下方修正を余儀なくされた。スティーブン・マー日産常務執行役員は「販売減はコスト低減などの生産活動で打ち返せるが、為替影響までは払拭(ふっしょく)できないだろう」と表情を曇らせる。下期の想定レートも慎重になる。

【機械】川重・安川電・コマツが見直し

造船・重機大手では川崎重工業が為替レートを期初より3円円高の1ドル=107円に修正した一方、三菱重工業は据え置いた。川重の19年度上期の売り上げ加重平均レートは同108・45円だった。実勢に合わせて想定レートを見直した。想定レートを変更しなかった三菱重工は「実勢を見つつも、将来は少し円安方向にも動くのではないかと思い、同110円で据え置いた」とやや円安基調を見通す。

工作機械など金属加工機各社の下期想定レートは据え置きが目立つ。アマダホールディングス(HD)は下期も同108円を維持。実勢に近く、為替リスクの米中問題が一時に比べ沈静方向にあるとみる。牧野フライス製作所は例年通り保守的に同105円を変えていない。DMG森精機も10―12月期の想定が期初のまま1ドル=110円。やや円安方向だが7―9月期から極端な為替変動はないとみた。一方、ソディックは「9月末の相場で推移する」(IR担当)と3円円安に見直した。

またファナックの下期の想定レートは期初の同100円を据え置き、安川電機は同105円(期初は同110円)に円高方向に修正した。

売り上げの大半を海外が占める建設機械業界では、19年4―9月期連結決算でコマツが為替の影響で売上高が268億円のマイナス要因となり、下期の想定レートを期初より5円円高に修正し、同100円とした。日立建機は円高で営業利益が49億円の悪化要因となったが、期初の想定レートを据え置いている。

【電機】日立・パナソニック、通期下方修正

電機業界は、日立製作所パナソニックが19年度下期の想定為替レートを円高方向へ見直した。半導体や自動車向けの需要低迷と相まって、通期業績予想を下方修正している。日立は通期見通しの売上高を前回(4―6月期決算)発表比で3000億円、営業利益を同800億円下げた。パナソニックも売上高予想を同2000億円引き下げている。

三菱電機富士通東芝NECシャープは下期の想定レートを据え置いたが、期初に1ドル=105円と円高に設定しており、引き続き為替相場を慎重に見通す。

日刊工業新聞2019年11月15日

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