企業の先進事業「フルサポート」する福岡市の悩み

2019年度に採択された11社と高島宗一郎福岡市長(前列右から3人目)

福岡市の「実証実験フルサポート事業」が拡大を続けている。全国の企業による先進的な取り組みを事業規模を問わずに受け入れて支援しており、実用化や行政サービスに発展する例も出てきた。実証フィールドとして門戸を開いた成果が生まれる一方、行政としてどこまで関与できるかという次の悩みも現れてきている。(取材=西部・高田圭介)

チャレンジの場

「一気通貫でチャレンジのフィールドを提供できるのが強みだ」。福岡市の高島宗一郎市長は10月に開いた採択プロジェクト授賞式で強調した。言葉の裏には、政令市の権限と国家戦略特区制度の「グローバル創業雇用創出特区」を活用した実証環境がある。

2016年度に始まった事業には、これまで162件の応募に対して48件が採択された。10月の採択には随時募集案件のほか「アグリテック」「AI多言語音声翻訳システム」というテーマ案件がある。社会課題の解決や行政サービスの効率化につなげる設定で、各テーマで複数の企業が実証を進める。

事業化につなぐ

「アグリテック」で採択されたルートレック・ネットワークス(川崎市麻生区)は、福岡市のイベントに参加したことをきっかけに事業を知った。担当者は「地域の試験場など自社でのアプローチが難しい場所とも一緒に取り組めたら」と期待する。

スマートロックを開発するtsumug(福岡市中央区)は今回が2度目の採択。牧田恵里最高経営責任者(CEO)は「(実証にとどめない)福岡市のサービス化への思いが強い」と語る。

実証を経て事業化に至った案件の一つがotta(同区)によるビーコン(小型発信器)を活用した子ども向け見守りサービスだ。九州電力など大手電力会社と提携しているほか、10月には福岡市の小学生に専用端末の配布を始めた。LINEは18年度にキャッシュレスをテーマに実証。4月に市の施設でのLINE Payによる2次元コード「QRコード」決済サービスを開始している。

行政の限界も

実用化事例が出てくる一方、課題となるのが実証後のサポートだ。福岡市の担当者は「本格サービスに至る上で役所としてどこまでフォローできるか」と話す。実証後の後追いには行政としての限界もある。市は約10件のサービス化を把握しているが、全て網羅するのは難しい。

実証から企業進出や雇用創出など副次的な効果も生じている。行政と民間企業との連携で今後どのような相乗効果を生み出すのか。「フルサポート」を掲げる取り組みの次のステップが問われる。

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