導入広がる「信用スコア」、期待と軽視できない懸念

算出方法・消費者理解など課題

NTTドコモは信用スコアを活用し、金融機関向けの融資基盤を提供

「信用スコア」の導入を決めたり検討したりする企業が増えつつある。契約を確実に守るか、道徳的に正しいとされる行いをするかなどの“信用力”を点数化し、高得点の人に特典を与えるような展開が想定されている。従来は金融分野での活用がみられたが、飲食やITといった領域でも利用が広がる可能性が高まってきた。一方でスコア算出方法の妥当性確保や、消費者の理解促進など、課題は多い。各事業者には丁寧な対応が求められる。(斎藤弘和)

「顧客(消費者)とお店の関係性をフェアにしていく」―。飲食店のインターネット予約サービスを手がけるテーブルチェック(東京都中央区)の谷口優社長は、2020年に参入を目指す信用スコア事業の意図についてこう説明する。

近年、消費者が飲食店のコース料理を予約した後に無断キャンセルをする事例が問題視されている。谷口社長は店側が信用スコアを活用し、点数の低い人には予約時にクレジットカード情報の登録を必須としたり、来店予定日が近づいたら電話確認をしたりすることでリスクが低減できるとみる。逆に高得点の人へは優待を提供することなどでマナーを守る動機づけを図る。

信用スコアに関する議論は国も進めてきた。総務省と経済産業省は「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」を17年11月から開催。19年3月の第10回検討会では、海外における信用スコアの状況を示している。大量の決済データと人工知能(AI)を組み合わせて与信コストを下げ、従来は融資が困難と判断されてきた個人や中小企業への資金供給を行う例があるという。

日本では、みずほ銀行とソフトバンクが出資するジェイスコア(東京都港区)が17年9月から「AIスコア」を提供。点数が高い人は好条件での借り入れができる。従来の融資では年収や勤務先が重視されがちだが「我々は性格とか、お金に対する価値観なども聞く。若い人ほど将来の可能性に期待をしてスコアを上げる仕組みも入れている」(大森隆一郎社長)。19年にはLINEやNTTドコモも信用スコア関連事業を始めた。

ただ、信用スコアがもたらす懸念は軽視できない。総務省と経産省の検討会の資料では「就職や結婚などに信用スコアが使われると人間そのものの選別につながる恐れがある」と指摘された。そこまで行かずとも、不当にスコアが低いと判断されてしまった人が不利益を被るような事態は避ける必要がある。

慶応義塾大学法学部の大屋雄裕教授は「例えば個人の自発的な行動に基づいて競争をして、格差が生じることは正当だ。だが一度スコアが下がったら社会的に排除されてしまうような“悪い格差”を避けるには、やり直しの機会が求められる。下がったスコアを上げる方法みたいなものが重要だ」と分析する。信用スコアに関わる企業には、消費者の理解や同意をどう得るかという点も含めた入念な取り組みが問われる。

日刊工業新聞2019年11月12日

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