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全固体電池を高容量化!負極電極体を吹き付けて積層する手法とは

物材機構、大面積化と連続生産容易に

物質・材料研究機構の研究グループは、市販のシリコン製ナノ粒子(ナノは10億分の1)を利用した簡便な方法で、全ての部材が固体で安全性が高い「全固体電池」の負極電極体を開発した。同粒子の分散液をステンレス板に吹き付けるだけで、ムラなく一様に積層でき、表面がなめらかな電極体を作製。シリコン蒸着膜に近い電極特性を確認した。電気自動車(EV)用の全固体電池の高容量化が期待される。

全固体電池の負極材に利用するシリコンの蒸着膜の作製には、高い真空度の製膜室中に原料となるガスを供給し基板表面に堆積する方法を使うことで実用的な出力特性を示していた。だが高真空の環境が必要で大面積化と連続生産が難しく、実用電池に採用するには低コストで生産性に優れた電極作製法が必要だった。

研究グループは、ステンレス円板上に直径50ナノメートルの市販シリコンナノ粒子の分散液を噴霧し電極を作製した。充電時に各粒子に起こる体積膨張を利用することで、電極体を構成する粒子同士が強く接合し連続膜へと形態が変化する現象を利用。シリコンの蒸着膜に似た連続膜を作れることを明らかにした。

成果は米科学誌ACSアプライド・エナジー・マテリアルズ電子版に掲載された。

シリコンナノ粒子電極体の充電前(左)と充電後の断面図(物材機構提供)
日刊工業新聞2019年11月8日(素材)

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