ノーベル賞・吉野氏で注目の旭化成、社長が考えるイノベーションの役割

「経営の軸にサステナビリティー」(小堀社長)

小堀秀毅社長
 旭化成は、サステナビリティー(持続可能性)を経営の軸の一つに据え、より多くの付加価値を生む企業へ変わろうとしている。同社は化学と繊維を基盤に、新しいものを貪欲に取り入れ、電子部品、住宅、医療へ事業を多角化してきた。吉野彰名誉フェローのノーベル賞決定で注目を集める中、環境問題ではどう行動するのか。小堀秀毅社長に聞いた。

 ―高校生環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの行動が、世界の注目を集めています。
 「次世代の目線から感じることを発信し、幅広い人が環境問題へ目を向ける良いきっかけになった。当社は『世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献』を理念とするが、事業での貢献とCSR活動は別々に見ていた。だが、今は企業の存在自体が持続可能な社会にどう貢献するかが問われる。一人ひとりが主体的に動き、働くモチベーションにしたい」

 ―具体的に、どう行動しますか。
 「2019―21年度の中期経営計画でサステナビリティーを一つの軸として前面に出した。事業活動での持続可能な社会への貢献と、企業価値の向上の好循環を回す。これが旭化成の将来像だ。環境&エネルギー、モビリティーなどの5分野に価値を提供し、5分野の売上高拡大は貢献の指標にもなる。また新事業や設備投資は、サステナビリティーの視点でチェックする」

 「今、環境貢献事業を選び、外部の有識者とともに科学的・定量的に二酸化炭素(CO2)排出量削減貢献量を計算している。セパレーターやヘーベルハウスなどが対象だ。化石資源を利用する業界は厳しい目が向けられる分、きちんと貢献を示す。10年、20年活動を続ける土台をつくる。また再生可能エネルギーで水素をつくる『グリーン水素』のように、シンボル的な仕事をいくつか作りたい」

 ―海外では「CO2排出量ゼロか否か」などの問いで黒白をつけ、“貢献量”は理解されにくい現状があります。
 「世界が響かないなら、日本が世界に響くようにしなければならない。資源の少ない日本が世界に貢献する方法はイノベーションだ。政府が提唱する『カーボンリサイクル』のように、日本がイニシアチブを取る活動の継続が認知向上につながる。当社の活動もこれまで伝える視点が薄かった反省がある」

 ―猛烈な台風などが増え、気候“危機”へ対策が求められます。
 「世界をあげて取り組まなければ、効果がない。歩調を合わせるには、時間軸と相手への理解と尊敬の上での議論が必要だ。先進国と新興国は産業構造やエネルギー制約が違う。一地域の理想論を押しつけては対立構造に陥り、失敗する」

 ―自家発電などへの投資の考えは。
 「水力発電は維持管理し、石炭火力発電は天然ガスやバイオマスへの転換を順次行う。投資時期は収益や従業員への還元などと合わせて総合的に判断する。持続可能な社会に貢献するイノベーションが当社の大きな役割。右往左往せず、活動の継続こそが重要だ」

 ―吉野名誉フェローのように、長期間の研究からイノベーションを起こすために企業として何をしますか。
 「当時と研究環境は変わった。組織にとらわれず、新しいことをやる人が増えた。当社はコア技術を磨くと同時に、外部やデジタル技術と“コネクト”して更に強くできる環境をつくる。若手研究者が得意分野を伸ばせるように一定の自由裁量を与え、活力のある会社であり続ける」
(聞き手・梶原洵子)

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日刊工業新聞2019年11月1日

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