経営陣を社員がチェックする中小企業が得た効果

ベルテクネ「社員主体経営」掲げる

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会社や経営陣に対しての設問を設けた「経営チェックシート」
 ベルテクネ(福岡県須恵町、前田努社長、092・932・4166)は、1914年創業の精密板金加工メーカー。創業家による経営の色合いを薄め、経営の透明化や、社員への権限委譲を進めてきた。6月には初の生え抜きで前田社長が5代目に就任。「社員主体経営」を掲げて取り組んできた鐘川喜久治会長に狙いを聞いた。(西部・高田圭介)

―「社員主体経営」を掲げたきっかけは。

「会社は規模が小さくても公的なものであり、社員が人生設計できることが経営者の責任である。取締役の報酬額開示や決算書公開を進め、社員が経営に参加する意識を高めてきた。社員主体経営と言うと社員が経営するのかと間違われるが、社員目線で経営をチェックするのが狙いだ。中小企業は社長で90%以上が決まってしまう分、社員が経営の目を持てば間違った方向に進まないと考えた」

―具体的にどう実践していますか。

「株式の3分の1は社員持ち株会で持っている。そのうち6人が参加して経営監査委員会を2カ月に1回開き、経営陣の経費の使い道をチェックしている。社長や取締役が私利私欲に走っていれば株主総会に答申して解任決議を出せる。他にも年に1回、社員や金融機関、取引先などと経営計画発表会を開く。対外的に経営をオープンにすることで経営陣が会社を公私混同しない効果もある」

―経営陣にとっては厳しい仕組みのようにも感じます。

「社員へ権限委譲を進めた当初は現場が慣れていないため『何もしない社長』『率先垂範しない』と言われることもあった。そこで『経営チェックシート』で社長を査定して意見や質問が自由にできるようにした。集計結果から社員にフィードバックし、考えることを意識して伝えた。かつて財務諸表も分からなかった社員も徐々に学んで経営に参加する意識も高まってきた」

―6月には創業家以外で初となる前田社長が就きました。

「社長定年制を70歳に定め、事業承継に支障がある場合には定年審議会の審議を経て2年間延長できる。創業家に能力があればいいが、同じ能力であればプロパーの方がいいと考えていた。会社の発展を考えた時、経営と資本は別であり、創業家以外が就くことは社員にとっても将来の夢を描ける」

鐘川喜久治会長

【ポイント/働きやすい環境生む土壌】
親族内承継を続けてきた企業が流れを変えることは大きな決断にも映る。だが中小企業がゴーイングコンサーン(事業の継続性)を考えると、内輪だけでは限界が来ることは不自然ではない。ベルテクネの社員主体経営は10年以上かけて骨格を築いてきた。経営者と従業員で線引きせず一体とした展開は、事業承継が社会的問題として注目される昨今、重要性を増している。今では中間管理職も投票で選ぶ。働きやすい環境を自発的に考える土壌が生み出されている。

日刊工業新聞2019年10月24日

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