少し先の未来、AIで実現するベンチャーの数々

シーテックで奮闘

 「CEATEC(シーテック)2019」では、テック系ベンチャーも奮闘した。少し未来の社会を実現するには、大企業には取れないリスクをベンチャー流のアプローチで突破することが期待される。仮想現実(VR)機器やカメラによるデータを人工知能(AI)で分析する技術が出展された。(取材・小寺貴之)

丸ごと記録


 「VR空間で五感や感情を丸ごと記録し可視化する。最高の顧客体験(UX)を作る環境をつくる」―。ダフトクラフト(東京都墨田区)の花島渉社長は、開発中のVRシステム「オウルビジョン」をこう説明する。ユーザーをヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)でVR空間に没入させ、視線の動きや脳活動データを記録する。

 住宅や店舗、ショースペースなどで視線が集まる場所を3次元的に可視化し、同時に感情の推移も記録する。ユーザーが何を見て何を感じたか、データをためる。

 脳活動計や触覚グローブとVRシステムを統合した。花島社長は「製品の価値がモノからコトへ移る中で、UXをプロトタイピングする空間を提供する」と意気込む。

映像を解析


 少し先の未来では、あらゆる産業でAIが活用される。フューチャースタンダード(東京都文京区)は、AIを使った映像の解析プラットフォーム(基盤)を提供する。防犯カメラを利用した交通量測定や小売店での顧客属性分析、工事現場のAI監視などに使われている。

 ユーザーは映像をアップロードして人数や性別、年齢などの分析したい項目を選ぶだけで済むという。藤井大地最高戦略責任者は「警備やマーケティング調査など、現場を知る人が簡単にAIを使える環境を提供する」と力を込める。

 AI活用の障壁の一つが計算コストだ。大量のデータを学習するディープラーニング(深層学習)は、組み込み機器などの計算資源が限られる用途では難しい。

 これに対し、QuantumCore(東京都品川区)は、リザーバコンピューティングという技術で計算量を削減した。

現場で実証


 深層学習で120秒かかる計算時間が1・8秒と60分の1になった。小型ボードコンピューター「ラズベリーパイ」で稼働するため簡単に現場で実証できる。長島壮洋最高技術責任者は「数百キロバイトのメモリーがあればマイコンにも実装できる」と胸を張る。

 SREE(スリー、名古屋市東区)は家庭用小型カメラに人検知AI機能を搭載した。ベランダに向けて設置すると、不審者などの人間が映りこむとスマートフォンにアラートを送る。動くモノを捉える動体検知では草木の揺れなどでも通知していた。AIで人間に絞ることで誤通知が減る。年末に発売する予定だ。

 カメラやAI技術の進化で生活の中にもAIが広がってきた。そしてVRで集まるデータの質も変わり始めている。今後は学習できるデータが広がり、多彩なサービスに応用されていく。この社会の進化をベンチャーが加速させている。

日刊工業新聞2019年10月18日

小寺 貴之

小寺 貴之
10月19日
この記事のファシリテーター

 AI搭載製品の増え方が早く、電気回路のついた新製品にはだいたいAIが入るような気になります。IoTもものになり、クラウドとつながる前提のデバイスも増えました。こちらはサービスとして売られているのであまり前面には出ません。IoTはB2Bワード、AIはB2Cワードだったのだなと感じます。カメラなどのAI製品は環境から人物や動作などの意味のあるデータを集めやすくなりました。VRをはじめ、体験そのもののデータ化も進んでいます。UXは多様なのでシンプルな機械学習に向くデータがとれるかはわかりませんが、まずはUXデザイナーとデータサイエンティストが使いこなすことになると思います。方法はわからないのですが、カオスなUXデータと学習系のAI技術の接点は非常にチャンスがあると思います。

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