来週からノーベル賞発表、有力候補者と研究業績を一挙紹介!

 秋の風物詩となったノーベル賞受賞者の発表が来週に迫った。自然科学3賞は7日に生理学医学賞、8日に物理学賞、9日に化学賞が発表される。2018年には京都大学の本庶佑特別教授が生理学医学賞を受賞し日本中が沸き返った。2年連続となる日本人受賞者の誕生に期待が高まる。有力候補者とその研究業績を紹介する。

【生理学医学賞】


<前田氏・松村氏 がん治療でのEPR効果解明>
 生理学医学賞は、がん治療での高分子薬剤の血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を発見した、バイオダイナミックス研究所(熊本市中央区)の前田浩理事長と国立がん研究センター先端医療開発センターの松村保広新薬開発分野長が有力候補だ。

 がん細胞周辺の血管から分子が抜けやすい性質により、抗がん剤ががん細胞に集まるEPR効果を解明。がん組織のみに抗がん剤を作用させる薬物送達システム(DDS)の基となる発見として薬学分野で注目され、抗がん剤治療の進歩に貢献した。

<森氏 小胞体の変性したたんぱく質の検出と修復>
 また、たんぱく質を作る細胞小器官「小胞体」の中の変性したたんぱく質の検出と修復の仕組みを発見した京都大学の森和俊教授も有力候補だ。この仕組みを応用し、糖尿病やがんの解明や治療法の研究が進む。

 森教授は、米科学情報企業のクラリベイト・アナリティクス(ペンシルベニア州)が学術論文の被引用数などを基に予想するノーベル賞受賞の有力候補者として15年に選ばれた。00年代から論文の被引用数が急激に高まり注目されている。

 また、日本人の論文の中で平成時代に最も多く引用されたとして、首都大学東京の田村浩一郎教授らによる、バイオインフォマティクスツール「分子系統解析ソフトウエアMEGA」の開発に関する論文が挙がっている。

 海外勢では、全遺伝情報(ゲノム)を自在に変えられるゲノム編集技術の一種「クリスパー・キャス9」のノーベル賞受賞の可能性も残る。

【物理学賞】


 物理学賞は天文学や量子力学、物性物理学などが受賞対象となる。18年はレーザー技術の開発で海外の研究者3人が受賞した。19年4月には日本を含む国際研究グループがブラックホールの輪郭を撮影したとのニュースが世界を駆けめぐり、物理学賞の候補に急浮上した。

<細野氏 酸化物半導体「IGZO」世界に>
 材料やデバイスの開発は日本のお家芸と言われる。その中で同賞の有力候補とされるのは東京工業大学の細野秀雄栄誉教授だ。液晶ディスプレーや有機ELに使われる酸化物半導体「IGZO(イグゾー)」や鉄系高温超電導体などを開発し、優れた成果を世界に発信している。

 さらに省エネルギーデバイスの実現に貢献する研究で、電気と磁気の性質を備えた「マルチフェロイック物質」を発見した東京大学の十倉好紀特別栄誉教授(理化学研究所グループディレクター)が挙げられる。磁石と半導体の性質を持つ物質「磁性半導体」を開発し、高性能で低消費電力の集積回路の実現を目指す東北大学の大野英男総長も有力だ。

<吉野氏 「リチウム電池」生みの親>
 携帯電話やノートパソコンなどに使われ、日常生活に欠かせないリチウムイオン電池も受賞の期待がかかる。同電池の開発者である旭化成の吉野彰名誉フェローは6月に欧州特許庁が主催する欧州発明家賞を受賞。カーボンナノチューブの発見で15年に同賞を受賞した名城大学の飯島澄男終身教授とともにノーベル賞受賞の呼び声が高い。

【化学賞】


 化学賞は近年、生理学医学賞と分野的に重なる案件で決まるケースが多い。それだけに日本が伝統的に優れている有機・材料分野で、受賞に対する期待の声は今なお強い。

<山本氏 「ルイス酸触媒」応用>
 01年の化学賞受賞者である名古屋大学の野依良治特別教授らと触媒化学で切磋琢磨(せっさたくま)してきた中部大学の山本尚教授は化学賞の候補の一人だ。広義で定義される酸・塩基の反応で、かさ高い構造を持つ「ルイス酸触媒」を開発。副生成物を抑え、目的の反応を優先的に進ませる技術を確立した。

 同技術は医薬品など機能性化合物に重要な、不斉の炭素―炭素結合の合成など、多様な反応に応用させた実績がある。血圧降下作用のある生理活性物質「プロスタグランジン」の合成や、工業的な不斉酸化で使うバナジウム触媒などで実用化されている。

<藤嶋氏 雑菌・におい分解「光触媒」>
 また東京理科大学の藤嶋昭栄誉教授は、光触媒の酸化チタンを使い、太陽光で水を分解し水素を製造できる可能性を示した。その後、光触媒の強い酸化分解力に注目して雑菌やにおい、油汚れを分解する応用で産学連携を進めた。空気清浄器のフィルターや建材、道路資材などで実用化されている。

 さらに水になじみやすい「超親水性」という別の機能も引き出した。曇らない自動車のサイドミラー、水で簡単に汚れが落とせる高層ビルの窓ガラスなどを実現した。産学連携により新たな一大産業を生み出した点でも、受賞の期待が集まる事例となっている。
(取材=安川結野、冨井哲雄、山本佳世子)

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