ニッポンのICT“前へ”、ラグビーW杯をもっと盛り上げる!
20日に開幕したラグビーワールドカップ(W杯)。日本はロシア戦に続きアイルランドにも勝利し、決勝トーナメント進出に大きく前進した。「スポーツ観戦×情報通信技術(ICT)」も大きな一歩を踏み出した。今大会では第5世代通信(5G)のプレサービスなどが実施され、スポーツ観戦の新たな楽しみ方や安心・安全な運営サポートを提供している。10カ月後の2020年7月24日には世界が注目するスポーツの祭典、東京五輪が開幕する。企業も実戦を重ねて技術を磨き、利便性を高めていく。
日本対ロシアの試合会場の東京スタジアム(東京都調布市)はアジア初のラグビーW杯会場であり、日本で初めて5G対応スマートフォンを観客が操作した記念的な競技場にもなった。
19時45分のキックオフと同時に、NTTドコモが観客席に持ち込んだLG電子製の2画面スマホに計五つの映像が映し出された。従来比で最大20倍の高速性能を持つ5Gを用い、これまで難しかった複数の高画質映像を同時にリアルタイムで受信可能にした。
2画面スマホの上段にはメーン映像を表示。下段には選手の布陣がわかるゴール裏からの映像、特定の選手を大写しにした映像、試合映像に表示された選手の名前に触れるとデータがわかる映像、リプレー映像を表示。下段の映像の中から見たい映像に触れると上段に映し出す仕組みだ。
この5Gスマホを使えば、反則で試合が止まるとリプレー映像で反則の理由を把握できる。トライ時には利用者がいる観客席とは異なる角度からトライの瞬間を確認可能だ。
ドコモは決勝戦などが行われる横浜国際総合競技場(横浜市港北区)などサッカーでも使えるラグビーW杯8会場のほか、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)、福岡ヤフオク!ドーム(福岡市中央区)といったプロ野球チームの本拠地も5Gエリア化する。サッカーや野球、音楽ライブの会場で5Gスマホを借り、リプレー映像やゴールシーン、好きな選手や歌手の大写し映像を確認する5Gサービスが期待できる。
日本対ロシアの試合では別の5G活用サービスも行われた。東京スタジアムからの4K映像を5G網で東京・汐留のライブビューイング会場にリアルタイム伝送し、約400インチの巨大ディスプレーに映し出す取り組みだ。ドルビーアトモスによる立体音響も採用。ライブビューイングの約300人の観客は、実際に両軍が激突する東京スタジアムにいるかのような臨場感を感じていた。
メーンディスプレーの両脇には約270インチのサブディスプレーを配置し、別角度からの映像を表示。元ラグビー日本代表の大田尾竜彦さんらを招いたトークショーや実況など、試合会場にない付加価値を加えた。
5Gによるライブビューイングは空調の効いた室内のため天候を気にせず、会場に行くことが難しい子ども連れや障がい者も楽しめる。会場から遠い地方の病院や学校などでも迫力のある試合を観戦できる。「今までにない視聴スタイルを生み出す」(吉沢和弘NTTドコモ社長)5G時代の幕が開いた。
NECは顔認証などの先進技術を駆使し、今回のラグビーW杯の安心・安全や効率的な運営を支える。ICTのインフラ関連を中心に「スタッフやボランティアなどの裏方を支援する」と、山本啓一朗NEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部部長は役割を強調する。
さらに11言語に対応した多言語音声翻訳サービス「NEC翻訳」を無料でダウンロードできるようにするなど、今大会で来日する約40万人の訪日外国人(インバウンド)への“おもてなし”にも焦点を当てる。
NECの看板ともいえる顔認証システムはバーコード記載のIDカードと、事前に撮影・登録した顔画像をシステム上でひも付けて本人確認を行う。ラグビーW杯では東京スタジアムと横浜国際総合競技場の2会場に設置し、報道関係者の本人確認に用いる。
「報道関係者はカメラなどの機材や大きな荷物を持ち込み、いろいろな場所に移動できる」(山本部長)。報道関係の登録数は約1万人に上り、本人確認に手間取っていては効率が悪い。かといって確認を怠ると、そこがセキュリティー上の盲点ともなり兼ねない。
NECの顔認証システムはIDカードを読み取り機にかざすと即座に本人確認でき、世界トップの精度でなりすましなどの不正を防ぎ、円滑な入場を実現する。顔認証システムの導入は大会史上初の試み。NECは動画や位置情報などもやりとりできる業務用無線の次世代システムも投入するなど、自社技術を国内外にアピールする好機となっている。
多言語音声翻訳サービスは従来、英語や中国語など4言語だったが、ラグビーW杯に向けてフランス語やスペイン語など11言語に増やした。音声翻訳を通して、国内のラグビーW杯開催12都市を訪れるインバウンドと、各地域とのつながりを深め、観光促進などの波及効果も見据える。
音声翻訳サービスの利用に伴うインバウンドデータは個人情報を取得しない形でNECが蓄積し、各自治体へ提供することで、外国人誘客にも役立てることが可能だ。
(取材=斉藤実、同・水嶋真人)
日本対ロシアの試合会場の東京スタジアム(東京都調布市)はアジア初のラグビーW杯会場であり、日本で初めて5G対応スマートフォンを観客が操作した記念的な競技場にもなった。
2画面スマホ
19時45分のキックオフと同時に、NTTドコモが観客席に持ち込んだLG電子製の2画面スマホに計五つの映像が映し出された。従来比で最大20倍の高速性能を持つ5Gを用い、これまで難しかった複数の高画質映像を同時にリアルタイムで受信可能にした。
2画面スマホの上段にはメーン映像を表示。下段には選手の布陣がわかるゴール裏からの映像、特定の選手を大写しにした映像、試合映像に表示された選手の名前に触れるとデータがわかる映像、リプレー映像を表示。下段の映像の中から見たい映像に触れると上段に映し出す仕組みだ。
この5Gスマホを使えば、反則で試合が止まるとリプレー映像で反則の理由を把握できる。トライ時には利用者がいる観客席とは異なる角度からトライの瞬間を確認可能だ。
ドコモは決勝戦などが行われる横浜国際総合競技場(横浜市港北区)などサッカーでも使えるラグビーW杯8会場のほか、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)、福岡ヤフオク!ドーム(福岡市中央区)といったプロ野球チームの本拠地も5Gエリア化する。サッカーや野球、音楽ライブの会場で5Gスマホを借り、リプレー映像やゴールシーン、好きな選手や歌手の大写し映像を確認する5Gサービスが期待できる。
臨場感に興奮
日本対ロシアの試合では別の5G活用サービスも行われた。東京スタジアムからの4K映像を5G網で東京・汐留のライブビューイング会場にリアルタイム伝送し、約400インチの巨大ディスプレーに映し出す取り組みだ。ドルビーアトモスによる立体音響も採用。ライブビューイングの約300人の観客は、実際に両軍が激突する東京スタジアムにいるかのような臨場感を感じていた。
メーンディスプレーの両脇には約270インチのサブディスプレーを配置し、別角度からの映像を表示。元ラグビー日本代表の大田尾竜彦さんらを招いたトークショーや実況など、試合会場にない付加価値を加えた。
5Gによるライブビューイングは空調の効いた室内のため天候を気にせず、会場に行くことが難しい子ども連れや障がい者も楽しめる。会場から遠い地方の病院や学校などでも迫力のある試合を観戦できる。「今までにない視聴スタイルを生み出す」(吉沢和弘NTTドコモ社長)5G時代の幕が開いた。
NECは顔認証などの先進技術を駆使し、今回のラグビーW杯の安心・安全や効率的な運営を支える。ICTのインフラ関連を中心に「スタッフやボランティアなどの裏方を支援する」と、山本啓一朗NEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部部長は役割を強調する。
11言語を翻訳
さらに11言語に対応した多言語音声翻訳サービス「NEC翻訳」を無料でダウンロードできるようにするなど、今大会で来日する約40万人の訪日外国人(インバウンド)への“おもてなし”にも焦点を当てる。
NECの看板ともいえる顔認証システムはバーコード記載のIDカードと、事前に撮影・登録した顔画像をシステム上でひも付けて本人確認を行う。ラグビーW杯では東京スタジアムと横浜国際総合競技場の2会場に設置し、報道関係者の本人確認に用いる。
「報道関係者はカメラなどの機材や大きな荷物を持ち込み、いろいろな場所に移動できる」(山本部長)。報道関係の登録数は約1万人に上り、本人確認に手間取っていては効率が悪い。かといって確認を怠ると、そこがセキュリティー上の盲点ともなり兼ねない。
NECの顔認証システムはIDカードを読み取り機にかざすと即座に本人確認でき、世界トップの精度でなりすましなどの不正を防ぎ、円滑な入場を実現する。顔認証システムの導入は大会史上初の試み。NECは動画や位置情報などもやりとりできる業務用無線の次世代システムも投入するなど、自社技術を国内外にアピールする好機となっている。
多言語音声翻訳サービスは従来、英語や中国語など4言語だったが、ラグビーW杯に向けてフランス語やスペイン語など11言語に増やした。音声翻訳を通して、国内のラグビーW杯開催12都市を訪れるインバウンドと、各地域とのつながりを深め、観光促進などの波及効果も見据える。
音声翻訳サービスの利用に伴うインバウンドデータは個人情報を取得しない形でNECが蓄積し、各自治体へ提供することで、外国人誘客にも役立てることが可能だ。
(取材=斉藤実、同・水嶋真人)
日刊工業新聞2019年9月25日 の記事を一部編集