浜松会議所、異例の会頭続投に見る地方都市の憂鬱

なり手不足、小規模自治体と異なる運営の難しさ

 「みんなの意見に合わせるしかない」。浜松商工会議所の大須賀正孝会頭(ハマキョウレックス会長)は記者団の取材に、こうこぼした。10月末に2期目の任期満了を迎える大須賀会頭。勇退の意向を示していたが一転、続投を表明
した。会頭人事をめぐり何が起こっていたのか−。

 浜松商工会議所会頭の後任人事について“本人抜き”の異例の会見が開かれたのは、8月下旬のこと。スズキの鈴木修会長、ヤマハの中田卓也社長、浜松いわた信用金庫(浜松市中区)の御室健一郎理事長、釣具店のイシグロ(同)の石黒衆社長の4人が出席し、大須賀会頭の続投を要請したのだ。

 鈴木会長は大須賀会頭が地元出身であることなどを理由に「成功例が豊富で、余人をもって代えがたい。がん首をそろえてお願いしたい」と強調した。

 鈴木会長によると大須賀会頭は当初、後任にスズキ関係者を検討していた。しかしスズキは4月に検査不正問題が発覚し、難色を示すようになる。大須賀会長はその後、ヤマハに打診するも固辞された。鈴木会長、中田社長はともに岐阜県の出身であることから、大須賀会頭の続投が最適と判断したという。

 大須賀会頭は2013年11月に就任。同会議所は内規で会頭在任期間を最長2期6年と定めているため、大須賀会頭もこれにのっとり今年10月末で身を引く考えを公言していた。「次は、地元の主力産業である製造業出身の人物を会頭に」とも主張していた。

 ところがその後、浜松市の鈴木康友市長が定例会見で「大須賀さんは市の施策に理解をしてくれる人物。続投できるのであればしていただきたい」と発言。地元経済人が築いた強固な包囲網は、次第に狭まっていった。

 同会議所関係者によると将来、会頭になる可能性のある常議員のなり手は「特に地方都市で不足している感がある。それぞれ、自分の会社の経営でいっぱいいっぱいのようだ」という。会員自体が多い大都市や、ほぼ固定的なメンバーが就任する傾向にある小規模自治体と異なる運営の難しさが、浜松のような地方都市にはある。

 同じ県内でも、決められた企業の中から会頭を選出する静岡商工会議所と異なり、浜松はそうした選出制度を持たない。「全て選び直す、という方法が良くも悪くも効果を発揮してしまった」と関係者は続ける。

 「いい人が出てくれば、そこで辞める」。大須賀会頭は続投を表明すると同時に、早期に退く考えをあらためて強調した。人事を巡るゴタゴタを露呈した浜松商工会議所。ほかの地方の商工会議所にとって、決してよそ事ではない。
(取材=浜松・竹中初音)

2019/9/23

  

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