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そうそうたる起業家を輩出した浜松で「家康くん」ロボの研究会始動

会議所とヤマ発などが連携。輸送機・楽器の基盤技術生かす
 浜松商工会議所の「浜松ロボット産業創成研究会」がスタートした。輸送用機器や楽器産業で培った基盤技術を独創的なロボット開発に生かす。20日にはヤマハ発動機とのビジネスマッチングを開催する。ご当地ゆるキャラ「出世大名家康くん」のロボット化計画も進む。同研究会の大木誠コーディネータは「作って満足でなく、もうける事が大事」と事業化を見据えた支援に力を入れる。

 「単なる企業同士の商談とは異なるオープンイノベーションを目指す」。ロボット事業を手がけるヤマハ発IM事業部とのビジネスマッチングの準備を進める浜松商工会議所工業振興課の古田直也さんの言葉に力が入る。

 ロボットメーカーと地域企業によるオープンイノベーションは全国でも珍しい。「試行錯誤しながら地域のロボット産業創成の足がかりにしたい」(工業振興課)としている。

 11月に松山市で開催される「ゆるキャラグランプリ」でのデビューを目指すのは家康くんロボットだ。自動車部品などの試作を手がけるエム・エス・ケー(浜松市浜北区)など研究会の有志4社が開発に着手した。

 本番では手や首を動かしたり、頬を光らせて感情を表現する。駆動はベルトコンベヤーなどに使われるオムニホイールを採用、同じ場所でくるくると回転できる。

 “音楽のまち”浜松発のロボットらしく、音楽も流れる。松浦譲エム・エス・ケー社長は「異業種が知恵と技術を結集して作ることに意義がある」と話す。

 家康くんロボはまず“観光大使”としての役割を果たし、将来はクラウド上の人工知能(AI)と連携した受け付け業務などへ用途を広げる構想だ。

(家康くんロボットの開発を進める松浦エム・エス・ケー社長<左から2人目)らロボット研究会有志)

 同研究会は浜松地域新産業創出会議の活動の一環。宇宙航空や医工連携に次ぐ6番目の研究会として発足した。会員数は77社(8月末現在)。

 同地域はトヨタグループの始祖、豊田佐吉やヤマハ創業者の山葉寅楠、スズキ創業者の鈴木道雄、ホンダ創業者の本田宗一郎、テレビの父、高柳健次郎らそうそうたる起業家を輩出した土地柄。強固な技術基盤と、“やらまいか(方言でやってみようの意)”精神の融合による独創的なロボット開発が期待される。

大木誠コーディネータ「事業化見据え開発支援」


 浜松地域でロボット産業の創成と発展を目指す大木コーディネータ(オフィス・エムアンドケイ社長)に今後の方針などを聞いた。

 ―テーマにロボットを選んだ理由は。
 「浜松地域はもともと動くモノを作るのが得意。輸送用機器で培った機構や部品の開発、製造技術だけでなく、電子楽器で使われる回路設計やソフトウエア、デザインなどの企業も集積する」

 ―課題はありますか。
 「かつては浜松地域だけで30社以上の2輪車メーカーがあった。長年地元の企業と取引するうちに指示待ち体質になりがちな中小企業もある。もう一度やらまいか精神を奮い起こし、新しいロボットとそれを使った新サービスを生み出したい」

 ―会員に求めることは。
 「名を連ねていれば仕事がくるのではという待ちの姿勢でなく自主的な提案を。こんなロボットを作りたい、使いたいというアイデアがタケノコのように出てきてほしい」

 ―商工会議所としての支援内容は。
 「地元だけに限らず、必要に応じ広域連携していく。単に面白いロボットを作ればいいのではない。ロボットでどんな新サービスを生み出すか、いかに事業化計画に乗せるか。販路開拓や金融支援など、幅広く支援していく」
(文=浜松・田中弥生)

日刊工業新聞2016年9月16日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
確かに改めてみると、浜松周辺からそうそうたる起業家が出ていますね。家康像についてはいろいろ歴史的な評価もあるが、今放送中の大河ドラマ「真田丸」で内野さんが演じている家康が、個人的には人間臭くて好きです。「家康くん」ロボットもぜひ人間臭いものを。

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