なぜ九州電力はイチゴのスマート栽培をはじめたのか?

 九州電力はIoT(モノのインターネット)技術を活用した、イチゴのスマート栽培の実証に乗り出した。ビニールハウス内の環境を自動制御するシステムを使い、省力化した農業のノウハウを確立する考え。2017年の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市を実証の舞台に選び、地域振興への思いも込めて実績を積み上げる。

 同市の田園地帯に6500平方メートルの敷地を借りて生産施設「上寺いちご園」を建設した。育苗棟1棟と生産棟2棟で広さは各600平方メートル。年7・4トンの収量が見込める経営スケールの施設だ。

 ハウス内外のセンサーで温度や湿度、日射や風向といったデータを収集し、環境を制御する。室温調整用の冷暖房は電気式の空気熱源ヒートポンプ。開放部や遮光カーテンは自動開閉し、苗には3種のパイプから養液と二酸化炭素、温度調節用の水を自動供給する。日照は自然光とした。

 九州電は6月から進める「グループ経営ビジョン」でスマート農業による地域振興も掲げた。施設の開設式で佐々木有三副社長は「九州に根ざす企業として農業に新しい形で力を注ぎたい」と意気込んだ。

 同社にとって農業の電化は“古くて新しい”分野。創業当初から電照ギクや野菜、施設園芸などを試験栽培してきた。イチゴも取り組んできたが、経営スケールの実証は初。最新技術でスマート化した栽培技術を3年間で構築し、農家などに技術移転していく。

 イチゴは販売価格が高く、ケーキ用や加工用など用途が広い。収穫も容易で効率的な点も考慮した。ベテラン農家らのアドバイスも受けながら、九州生まれの「さがほのか」など5品種ほどを試し、通年での収穫を実現する。冬には初収穫のイチゴが近隣の「道の駅」に並ぶ予定だ。(西部・三苫能徳)

日刊工業新聞2019年9月20日

  

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