「宇宙開発で米ロに負けることが多いが、『衣食住』で日本は勝てる」(向井千秋)

東京理科大などのモジュール実証、宇宙滞在“の快適空間”を創出へ 

スペースコロニーのイメージ図(JAXA公式サイトより)
 東京理科大学を中心に、宇宙居住に関する要素技術の実験実証が始まった。地上での実証を積み重ね、宇宙滞在技術の確立を目指す。米航空宇宙局(NASA)は月面探査計画「アルテミス」で、2024年までに米国の宇宙飛行士を月へ送ることを目指している。米国の動きに呼応し、世界中で有人月面探査に向けた宇宙滞在技術の研究開発が進む中、日本も産学連携によって優位性を高めようとしている。

 東京理科大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、清水建設は、「スペースコロニーデモンストレーションモジュール」を東京理科大野田キャンパス(千葉県野田市)に設置した。

 同モジュールは、空気を充填して膨らませることで大きな居住空間を容易に宇宙空間に構築できることが特徴。2重の扉構造などを備えることで内部の気密が保てる。全長8・1メートル×幅5メートル、質量160キログラム。材質はポリエステル繊維布が使われている。

 プロジェクトの中心を担う東京理科大スペース・コロニー研究センター副センター長の木村真一教授らは、「19年秋から設置した施設内で光触媒を活用した空気浄化技術の研究を実施する。また、植物生産技術などの実証実験も予定する」と、モジュールを利用した実験の実施に意欲を見せる。

 これまで培った研究の強みを結集し、民間と連携しながら宇宙での生活の課題の解決を目指す。同大で研究を進めている空気や水などの再生技術などの環境維持技術と組み合わせることで、地上でも災害時の居住空間構築などに活用することが期待できる。

 モジュールの設計や製作、建設は清水建設が担当した。同社は人が月面に滞在するための技術研究に30年以上取り組んでいる。モジュールでの実証実験のフィードバックを受け、モジュールを使いやすいように改良することで東京理科大のプロジェクトを後押しする。月面という地球と大きく異なる環境で快適な空間を作るための施工技術や材料技術を磨く。

 モジュールを使った実証実験を通して宇宙居住のための要素技術の開発が進むことは、月や火星での居住の大きな一歩になる。

                     


向井千秋さんインタビュー


 宇宙飛行士で東京理科大スペース・コロニー研究センターのセンター長を務める向井千秋さんに、プロジェクトの狙いを聞いた。

 ―日本の宇宙開発はどのように発展すべきだと思いますか。
 「宇宙開発でロシアや米国には負けることが多い。だが『衣食住』に関しては日本は十分勝てる技術を持っている。日本の存在をアピールでき、日本にできることをやる」

 ―モジュールの設置で期待することは何ですか。
 「地球上と宇宙空間では全く環境が異なる。同モジュールを使うことで、地上での既存の研究の成果や技術力を2倍、3倍に膨らませて宇宙で使えるように発展させるようになる。大学などのアカデミア(学術界)と産業界から、人類の宇宙での滞在に向けた研究を後押ししたい」

 ―人類が宇宙で生活するための構想を教えてください。
 「地球と月での持続可能な社会基盤を構築
する研究を進めたい。目標を高く持てばアウトプットの質も高くなる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献し、持続可能な世界を地球だけでなく宇宙にまで広げたい」
「日本の存在をアピールでき、日本にできることをやる」と向井さん


(取材・飯田真美子)

日刊工業新聞2019年8月8日

キーワード
向井千秋 モジュール

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