東京五輪で試される日本の“SDGs力”、資材調達・運営の「脱炭素」なるか

基準を違反した企業がNGOから批判される事態も

 東京五輪・パラリンピックの開幕まで1年を切った。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる初の五輪であり、再生可能エネルギーの活用などで二酸化炭素(CO2)を実質排出しない「脱炭素」を目指す。環境や社会に配慮して生産した木材や紙を採用する「持続可能な調達」にも取り組んでおり、世界が注目する舞台で日本の“SDGs力”が試される。

五輪の大会組織員会は2018年6月に公表した「持続可能性に配慮した運営計画第二版」に「SDGsへの貢献を明確化」と記載し、気候変動や資源管理など五つのテーマ別に目標設定した。

基準を順守


 気候変動は脱炭素が目標だ。競技場は最新設備や太陽光パネルを採用して省エネルギー化を徹底する。再生エネを利用したと見なすグリーン電力証書も使い、電気は100%再生エネ化する。対策をしても排出してしまうCO2は、他の場所で削減した排出量を調達してゼロ化する「カーボンオフセット」を実施する。20年は温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がスタートの年でもあり、“脱炭素五輪”としても世界が注目する。

 環境や人権・労働、公正のテーマで要となるのが調達だ。組織委員会は環境や社会に配慮して生産した商品を利用する「持続可能性に配慮した調達コード」を運用する。木材では合法的な伐採、生態系の保全、現住民の生活の場を奪っていないなどが基準だ。だが17年、コンクリートを流し込んで固める型枠の木材について、非政府組織(NGO)が基準が守られていないと指摘した。調達コードは見直されて改訂版が1月に発行したが、多くの施設は完成間近であり、木材の調達はほぼ終了している。

 紙の調達コードにも合法性、生態系への配慮などの基準がある。大会期間中も書類や関連グッズ、包装材などでも紙は使用される。組織委員会はコードが順守されていない調達の通報窓口を設け、不適切な資材が使われないように目を光らせている。大会終了後、調達実績が公開されると、持続可能性に配慮した五輪を達成できたか判明する。

FSC認証


 五輪後も脱炭素や持続可能性な調達をレガシー(遺産)として定着できるのか、問われている。国内で流通する木材のうち国産材が3割を超えたが、依然として輸入材が多い。輸入するコピー紙も半分がインドネシア産となっており、持続可能性への配慮が不十分な資材が国内に流通する恐れがある。

 東京都は6月、環境配慮製品の調達基準を改定し、推奨事項に「FSC認証を受けたもの」と加えた。FSCは、国際的な基準で環境や社会に配慮して生産した森林資源と認める制度だ。普通は「持続可能なもの」などと曖昧な書き方が多い。FSCと明記されたことについて、WWFジャパンの古澤千明さんは「公共調達での記載は大きな一歩」と評価する。

 違法や住民紛争を抱えて生産された木材や紙を購入する企業が、NGOから批判される事態が起きている。企業も、五輪を契機に持続可能な調達への意識を高める必要がある。

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日刊工業新聞2019年7月26日

  

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