ネット会議で医工連携、距離の制約を超えて誕生した変わり種の手袋

青森の広告デザイナーが開発

心肺蘇生法が印刷された手袋「QQグラブ」
 青森県八戸市の広告デザイナーが、心臓マッサージを補助する手袋「QQ(キューキュー)グラブ」を開発した。東京都文京区に本社を置くフジタ医科器械が製品化を後押しした。青森と東京の距離を超え頻繁なやりとりを可能にしたのが、インターネットを使った会議(ウェブミーティング)だ。距離の制約を乗り越えた医工連携の新たなモデルになりそうだ。(文=森下晃行)

 「目の前で人が倒れたとき、手元に救命の手順が書いてあればとっさに行動できるかも」。広告デザイナーの目代靖子さんはこんな発想で、心臓マッサージの手順を印刷した不織布の手袋を考案した。心停止した人を前にしても、印刷の指示に従えば落ち着いて心臓マッサージを施せる製品を目指した。

 まず試作品を作り、地元の産業支援機関である八戸インテリジェントプラザで特許を出願した。しかし、製品化に向けて動きだしたものの何をすればよいかわからない。創業支援コーディネーターに相談したが、有効な助言を得られず困っていたという。そこで活路を導いたのが、相談先として紹介された医工連携団体である日本医工ものづくりコモンズだった。目代さんは弘前医療福祉大学と接点ができ、救急の現場に即したアドバイスをしてもらえた。また、東京のフジタ医科器械からは価格設定などに協力してもらい製品化の目途が立った。

 フジタ医科器械を含めた各企業や団体と協力するのに活用したのがウェブミーティングだった。ウェブミーティング用ソフトウェア「zoom(ズーム)」を利用し、2018年5月から19年7月まで計22回会議を行った。参加者は業務の合間を縫って早朝や夜に会議し、密な連携を図った。開発者の目代さんは「一つのコンセプトに皆が関心をもちアイデアを出し合った。皆さんに育ててもらった製品だ」と振り返る。

 ウェブミーティングのメリットは地理的・時間的な自由や交通費の削減だけではない。フジタ医科器械の前田宏信社長は「気軽に打ち合わせを重ねられる分、率直に意見を言えるフラットな関係を築きやすい。いろんなアイデアや意見が短時間で多く出やすいのでは」と指摘する。日本医工ものづくりコモンズの柏野聡彦専務理事は「チームが高密度で連携しスピーディーに成果に達成した事例だ。今後はウェブミーティングが医工連携の新たな道筋になるのでは」と目を輝かせる。

 プロジェクトは1人では動かない。地理的な制約を超えたウェブミーティングが医工連携の鍵になる。QQグラブがつかんだ可能性に注目したい。

日刊工業新聞2019年8月6日

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