電子楽器を機械が打鍵、AIが異常検知

熟練の技を自動化、重要工程の自動化で品質維持・負担軽減

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熟練技術のデジタル化による“匠の技”の保存が、製造業で進んでいる(カシオが開発した自動打鍵機=同社提供)
 カシオ計算機は人工知能(AI)を活用して、電子楽器の検音工程を自動化する。2019年度中に、独自開発した自動打鍵機とAIを同工程に導入する。AIが製品の異常音だけを高精度に検知し、検査時間の短縮が可能になるという。同様の取り組みは業界でも珍しい。熟練の技能者に委ねていた重要工程の自動化により、品質維持や従業員の負担軽減につなげる。

 カシオ計算機は中国子会社のカシオ電子科技(広東省中山市)で電子楽器を生産している。中国子会社の検査工程に導入する新たな官能検査では、自動打鍵機が一定の強さで鍵盤を叩き、機械に設置したマイクで集音し、AIが解析する。不良品に発生する異音や機械の周囲で発生する雑音のデータを学習して、ネジの緩みなどで発生する異音だけを高精度に検知する。

 検査に用いるAIは、水中用トランシーバーの開発で培った集音・変換などの技術や、専門家の助言を基に作成した。一連の投資額などは非公表。

 従来の検査と比較すると、スタンダードタイプの場合で検査員3人分程度の時間短縮を見込む。カシオ計算機の矢沢篤志執行役員生産本部長は「(生産の効率化よりも)品質の維持への寄与が大きい」と語る。従来の検査では検査の精度が個人の能力や体調に左右される可能性があった。

 電子楽器の生産効率化は、18年10月に一部製品の組み立て自動化により高めている。電子ピアノの鍵盤の組み立てでは、従来比で約60%の生産効率化と工数削減を達成した。

 政府は19年版「ものづくり白書」で、熟練技術のデジタル化による生産効率化の重要性を指摘する。ニコンは熟練技術が不可欠とされるカメラ用交換レンズの加工や検査で、20年度からのAI活用を目指す。人手不足や技能伝承などの観点からも、“匠(たくみ)の技”をAIで維持する動きが広がりつつある。

日刊工業新聞2019年7月30日

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