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「合意なき離脱」へ日本企業は最大級の警戒

ジョンソン英首相就任で影響さけられず
「合意なき離脱」へ日本企業は最大級の警戒

2015年10月の来日時にストリートラグビーを楽しむジョンソン氏

**メーンシナリオは「合意なき離脱」
 英国の与党・保守党の党首選に勝利したボリス・ジョンソン前外相が首相に就任し、新政権が本格始動する。同氏は欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」も辞さない姿勢を示し、党首選勝利後の演説でも予定通り10月31日に離脱すると表明した。EUや英国関連のビジネスを手がける日本企業は、最悪の事態を想定したリスク管理体制を一段と強化する必要がある。

 今後の見通しについて、みずほ総合研究所の吉田健一郎上席主任エコノミストは「合意なき離脱になる可能性が55%」としている。与党内の親EU派が造反して野党とともに内閣不信任案を提出する可能性も極めて高く、さらに破天荒な人柄で知られるジョンソン氏が“変心”して現行の離脱協定案をのむ「合意ありの離脱」になる可能性もある。さまざまな予測が立てられる現状だが「メーンシナリオは合意なき離脱」(吉田氏)とみる。

 合意なき場合、日本の製造業にとって一番懸念されるのはEUと英国間の関税発生で物流が滞るリスクだ。英国は合意なき事態を想定し、英国に入る輸入関税の87%(金額ベース)を一挙に無税にするなどの緊急の暫定措置を離脱時に導入すると発表。EU側も税関業務に携わる人員を増やすなどして影響を最小限にとどめる構えだ。しかし、これまで素通りだったモノの流れに“関所”ができる事態に変わりない。大なり小なり影響は避けられないだろう。

 日本企業は、すでに工場の在庫を積み増すといった対応を取りつつあるが、より真剣に合意なき離脱への対策を練る必要がありそうだ。

貿易会会長「軟着陸を期待」


 日本貿易会の中村邦晴会長(住友商事会長)は24日の定例会見で、英国の新首相にブレグジット(英国の欧州連合離脱)問題で「合意なき離脱」も辞さないジョンソン氏が就任することについて「ソフトランディング(軟着陸)になることを期待したい」と話した。

 泥沼化の様相をみせる日韓関係については「相互の信頼が一番重要だ。できる限り早い時期に政府の貿易管理上の懸念事項が解消されることを望む」と述べた。

 日本政府による半導体材料の対韓輸出管理の強化をめぐっては「輸出管理上の見直しの問題」とし、韓国側が指摘する世界貿易機関(WTO)の協定違反には該当しないとの考えを示した。

来日時はストリートラグビーに汗


 一方、ジョンソン氏はロンドン市長だった2015年10月に来日し、ストリートラグビーの体験パフォーマンスを披露したことがある。2019年ラグビーワールドカップ日本大会を盛り上げるため、ロンドン・東京両都市が連携して、ラグビーの普及につなげるのが狙いだった。

 エキサイトしすぎたのか、参加した10歳の男の子に強めのタックルをかまし、両者で転んだ様子が英BBCなどで放映され、ジョーク好きの英国人たちの間でしばらく話題になったこともある。

 奔放な言動で知られるが、古代ギリシャ語やラテン語にも通じる上流階級の出身で、複雑な人物像は「離脱派」から根強い支持がある。
日刊工業新聞2019年7月25日(政治・経済)に加筆

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