衛星通信用の地上アンテナをシェア、宇宙ベンチャーの狙い

インフォステラ、衛星データの送受信をもっと安価に

 宇宙ビジネスをより身近に―。Infostellar(インフォステラ、東京都品川区、倉原直美最高経営責任者〈CEO〉)は、衛星通信用の地上アンテナのシェアリングサービスを手がける。農業や船舶、インフラ管理など、小型人工衛星の活躍が期待される産業は広いものの、地上アンテナの整備がネックの一つになってきた。そこでインフォステラがアンテナの空き時間をまとめて融通する。人工衛星と地上を結ぶ通信プラットフォームを一手に握るポテンシャルを持つ。(取材・小寺貴之)

 「私自身が衛星オペレーターとして絶対に欲しいと思っていた。周りも皆困っている。ニーズは確実にある」と倉原CEOは起業を決めた。2016年にインフォステラを設立し、翌17年に欧州エアバス・ベンチャーズやソニーなどから約8億円を調達した。

 衛星が観測したデータを地上に送るには、地上にアンテナが必要だ。地球一周どこででも衛星データを送受信するには40―50基のアンテナが要る。建設に1基1億円はかかり、各地で用地の借り上げやメンテナンスなどのサポート体制を整える必要がある。これが衛星サービス普及のハードルになってきた。

 そして衛星通信に標準となる方式がない。電波の周波数帯はアンテナの設計で決まるものの、信号をアナログからデジタルに変換する「変調方式だけで代表的とされる方式が10はある。その亜流がいくつもあり、組み合わせを含めると数え切れない」(倉原CEO)。そのためアンテナを他の事業者から借りる場合、契約や接続用の開発に半年以上かかっていた。

 インフォステラは変換接続機能を開発し、アンテナ事業者との契約を含めてクラウドで一括提供する。倉原CEOは「衛星を持つ顧客と検討を始めて1週間や1カ月で実際につながる。顧客はそのスピードに驚き、これまで何をやっていたのかと嘆く」という。

 アンテナ事業者は自社では使わない空き時間もアンテナが稼ぐようになる。宇宙ビジネスの損益分岐点が下がり、農業などの採算の厳しい分野に広げられる。大学にとっては貴重な収入源になる。倉原CEOは「研究者と民間が交流し産学連携が進む」と期待する。

 だが裏方は大変だ。インフォステラではエンジニアが変調やコーディングなど、無数の接続方式を一つひとつ開発している。倉原CEOは「エンジニアは途方もない数に心が折れてしまう。経営者としては謝るしかない。今はこつこつラインアップを増やしている」と明かす。いずれインフォステラの便利さにユーザーが慣れてしまえば、インフォステラの接続方式ラインアップにそろえて衛星を設計するようになる。

 サービスはスピード勝負だが、ビジネスモデルが確立するまでは長期戦だ。その点でエアバスがリードインベスターに就いたことは大きな意味がある。「回収期間を10年と長期的に事業を支えてくれる」(倉原CEO)。長期戦を戦い抜き、宇宙ビジネスが産業化する頃には、衛星通信を束ねるプラットフォーマーに大化けする。
インフォステラの倉原氏

日刊工業新聞2019年7月12日(政治・経済)

小寺 貴之

小寺 貴之
07月15日
この記事のファシリテーター

衛星放送以外の振興勢で衛星を使ったサービスで稼げているのはプラネットとスパイアの2社だそうです。NASAが民間移転を進めているため、宇宙産業の拡大は確実視されながらも、時間がかかるのがベンチャーの辛いところです。日本では産業拡大を確実視しているのが研究機関や官庁の周りにいる人たちなので仕方ないのかもしれません。時間がかかれば人件費が出ていくので、ベンチャーの時間を奪う人たちはそのベンチャーの寿命を食い潰していることになります。そのためアーリーステージのインフォステラも赤字の垂れ流しは許されず、早く売り上げを立てて自立に向けた取り組みが求められています。時間をかけてでもベンチャーを育てるには、早くから自活を促すのは現実的だと思います。

               

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