「検査不正」の終わらせ方。スズキとスバルは対策にどれだけ投資する?

 SUBARU(スバル)の完成検査不正の問題は2017年以降、相次いで発覚した。国内工場で無資格の従業員が完成検査に携わっていたほか、排ガス・燃費測定値の改ざん、最終組み立て工程後に実施する完成車の全数検査でブレーキや舵角検査などで不正行為が判明した。

 世界販売が堅調で工場の稼働率が高まる中、業務量が膨れ現場に負荷がかかっていたほか、老朽化する設備に対しても必要な投資をしなかったことが問題の引き金となった。経営陣の完成検査業務に対する認識や関与も不十分で、特に現場から上司にものを言いにくい組織風土があり、中村知美社長は「不正をさせない体質づくりを進め、企業の風土改革や品質改革に取り組む」としている。

群馬製作所所長インタビュー


  スバルは再発防止に向け、組織の抜本的な見直しに着手した。不正の温床となった国内唯一の生産拠点である群馬製作所(群馬県太田市)のトップに営業出身の細谷和男副社長をあてた。群馬製作所のトップに営業出身者が就くのは異例だ。

 ―完成車検査不正や大規模リコール(無料の回収・修理)でモノづくりに関わる問題が噴出しました。
 「製造部門で風土改革、品質改革を進めている。製造だけでなく、開発やサプライヤーを含めて一体となって設計段階から改革する必要がある。熟練工が当たり前にできる作業も、経験の浅い作業員が同じようにできるとは限らない。無理をして作業していては問題が生じる。製造の仕方を含め上流にフィードバックして現場を見直している。もうワンランク上の品質に高める」

 ―品質の向上に向けて5年間で1500億円の設備投資を計画しています。
 「製造から開発の全ての工程で品質をよくするためにやるべきこと、やった方がいいことを洗い出し、優先順位をつけて取り組む。投資額の大きさだけが一人歩きしてはいけない。品質の向上に、飛び道具のような対策はない。自動車の製造が高度化する中で、この設備を入れれば終わりというものはない」

 ―再発防止を優先するために工場の操業を落としていますが、2019年度下期に戻す計画です。
 「下期のできるだけ早い時期に操業を回復しようといろいろな改善をしている。生産スピードを従来のような正常化レベルに戻しても、きちんと品質が作り込まれていなくてはいけない。手順をよく見直し試行錯誤している。改善を進める中で細かい問題が出てくるが、それを一つひとつ潰し、積み上げていく」

 ―米中貿易摩擦など通商の不透明感をどうとらえていますか。
 「通商を巡る情勢がどういう方向に動くのか憂慮している。(主力市場の米国と日本で)通商環境が変化すれば、当然当社にも影響が出る。日本を中心に生産し、米国の生産能力を徐々に増やしてきた。(環境が変化しても)生産体制は急に変えられるわけではなく、すぐには動けない」
品質向上を最優先にするスバルの群馬製作所本工場 

5年間で1500億円


 スズキも4輪車と2輪車のブレーキなどの安全性能に関わる分野の検査不正と、無資格検査員が単独で最終検査をしていたことを4月に明らかにした。16年に発生した燃費不正から約3年という短期間で発生した大規模不正。ブランド回復のために土台からの改革が求められている。

 両社はともに検査体制を強化する。スバルは再発防止に向けて、完成検査部門を製造部門から移管して独立性を確保したほか、5年間で品質向上策に1500億円を投資し、検査設備の新規導入に取り組んでいる。製造部門においても設計段階から品質が十分確保できるよう開発部門やサプライヤーが一体となり製造の現場づくりを進めている。

 スズキも不正の大きな原因と指摘されたのが、検査員と工場内のスペースの慢性的な不足だ。再発防止策として同社は検査専門の部署「検査本部」を設置するなどの組織改革を行った。さらに向こう5年間で約1700億円を投じて検査の自動化などを進める。

 スズキは鈴木修会長が掲げる「小・少・軽・短・美」という旗印の下で低コスト、高効率な生産方式を追求してきたが、そのほころびが明らかになる結果となった。これまでの方式から現場の声を基に動く体制へと、さらに踏み込んだ体質改革が求められている。

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日刊工業新聞2019年7月10日の記事を加筆・修正

  

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