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GEの「ブリリアント・ホスピタル構想」、カギはIoTと病院への常駐

GEの「ブリリアント・ホスピタル構想」、カギはIoTと病院への常駐

写真はイメージ

 GEヘルスケア・ジャパン(東京都日野市、多田荘一郎社長)は、日野本社工場で実施している生産性改善のノウハウを病院経営に応用。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ(大量データ)を活用し病院経営を改善するサービス体系「ブリリアント・ホスピタル」構想を2018年7月からスタートした。現在約10施設で導入している同サービスを19年中に累計20施設まで拡大を目指す。

 「いかに可視化するかがポイントだ」。GEヘルスケア・ジャパンの松岡慎一執行役員はそう語る。ブリリアント・ホスピタルは同社の日野工場のモノづくりノウハウから生まれた。リーン生産方式とデジタル化で無駄を減らし効率的なモノづくりを行う。院内の機器や医療従事者、患者などのさまざまなデータを収集・分析することで潜在的な課題を見える化する。モノづくりの手法を医療現場に応用し、コスト削減などで病院の経営を改善。「卓越した病院を作る」狙いだ。

 ブリリアント・ホスピタルは主に「アセット・パフォーマンス・マネジメント(APM)」「アプライド・インテリジェンス 医療データ分析サービス」などのソリューションで構成する。

 APMは院内の資産(アセット)状況を最適化。今まで院内の医療機器の稼働台数などを把握するには人手や時間がかかっていた。この問題に対し機器に取り付けたセンサーで状況を把握、稼働率の低い機器などを洗い出す。同社の日野工場で導入している技術を応用したIoTサービスだ。18年7月にAPMの導入契約を結んだ倉敷中央病院(岡山県倉敷市)では130台の超音波診断装置の稼働台数を20%削減。保守・管理費や減価償却費の削減につながった。
                 

 「アプライドインテリジェンス 医療データ分析サービス」は院内のさまざまなビッグデータを可視化する。機器のデータに限らず電子カルテのデータや医療従事者のオペレーションデータなども収集、匿名化処理し同社のクラウドで分析。データをグラフなどで可視化するアプリケーションを提供し、医療従事者の人員配置や患者の待ち時間を最適化する。現在は複数の医療施設への導入が進んでおり、今後さらに導入件数を増やしてスコア比較のためのベンチマーク取得を目指す。

 ブリリアント・ホスピタル構想の鍵は隠れた問題をコンサルティングで見つけ出すこと。GEヘルスケアの強みはスタッフが病院にほぼ常駐している点だ。問題の洗い出しからサービスの導入、結果の測定・解析までを一貫したソリューションとして提供することができる。

 APMやアプライド・インテリジェンスなどのサービスは今後、複数の施設を持つグループ病院などを中心に導入件数を増やしていく。「病院内の人やモノの動きを透明化すれば、ビジネスの種がたくさん見つかる」(松岡執行役員)。種が芽吹くその日を見据えて取り組みを続ける。
病院でのコンサルティング
日刊工業新聞2019年7月1日

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