20億人の顧客基盤は魅力だが…FBの新暗号資産「リブラ」は普及しない!?

マネロン対策が課題、新しい決済サービス創出なるか

技術面で“いいとこ取り”


 交流サイト最大手の米フェイスブック(FB)が実用化を目指す暗号資産(仮想通貨)の「Libra(リブラ)」について、専門家の間で普及するのは難しいとの見方が出ている。ビットコイン研究所の大石哲之代表は「(リブラの)技術面は(他の暗号資産の)『いいとこ取り』で、目新しさが見られない」と指摘。その上で「全世界のFB利用者に対応できるほどのスケーラビリティ(拡張性)もなく、普及するとは思えない」との考えを示した。

 ブロックチェーン推進協会(BCCC、東京)が1日、都内で開催した座談会で述べた。他の出席者からは技術的課題に加えマネーロンダリング(資金洗浄)対策が課題との意見が出る一方、銀行口座を持たない人々には普及し、新たな経済サービスが生まれると期待する声も聞かれた。国際組織の金融活動作業部会(FATF)は各国の暗号資産関連企業に対し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策や本人確認を求めている。

 森・浜田松本法律事務所の増島雅和弁護士は、こうした対策がリブラに取られていないのが問題と指摘した上で「FBは既存の金融秩序に挑戦しているが、各国政府が認めなければ失敗に終わる可能性がある」との見方を示した。

 もっとも、リブラは他の暗号通貨と異なり、銀行預金や短期国債など複数種類の安定的な資産を裏付けとして保有し、信頼性の向上と価値の安定化を図るという特長を持つ。フィンテック関連に詳しい大和総研の長内智主任研究員は「価格変動が抑えられ、決済に使いやすくなる。(FB利用者20億人以上という)顧客基盤があるのも強み」と話した。

 また、スイスに設立する「リブラ協会」が、暗号資産の開発や発行を担い、「ファウンダー」と呼ばれるリブラのプロジェクトへの出資企業と共に、ブロックチェーンのネットワークも構築。送金や決済に利用できるため、既存の金融機関やシニョリッジ(通貨発行益)を享受してきた各国政府の脅威になるとの見方も出ている。

オープンソースは高評価


 一方で、ブロックチェーン技術に詳しいカレンシーポートの杉井靖典代表取締役は、リブラが仕様を無償公開する「オープンソース」と呼ばれる開発手法を取る点を評価し、「世界中の人がリブラを持つことで、いろいろな『夢』を見られるようになる」とした。

麻生金融相「注意深く見守る」


 麻生太郎金融相は2日の閣議後記者会見で、FBが発行計画を公表した暗号資産「リブラ」への対応を問われ、「(暗号資産は)化ければ意味がある。禁止ではなく注意深く見守る必要がある」と述べた。安価な手数料設定の送金サービスが実現する可能性があると例示した。

 麻生氏は、暗号資産をめぐる規制対応について、バーゼル銀行監督委員会(事務局スイス・バーゼル)で規制対応を検討すると指摘。その上で「日本として国際連携を緊密にする対応を詰めなければならない」と答えた。

日刊工業新聞2019年7月2日(金融・商況)

  

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