営業出身の生産担当役員は極めて異例、スバル「企業風土改革」のキーマンを直撃

細谷和男副社長(群馬製作所長)に聞く「飛び道具のような対策はない」

 私たちは何よりも品質を大切にしてお客さまの信頼に応えます―。SUBARU(スバル)は4月、全従業員が共有する「品質方針」を約25年ぶりに改定した。2017年10月以降、相次いで発覚した検査不正や品質問題を踏まえた見直しで、法令順守や社会規範の徹底を明記した。

 スバルはここ2年、検査不正と品質問題に揺れ続けた。無資格者による新車の完成検査や燃費・排ガスデータの改ざんが発覚したほか、自動車の基幹部品であるバルブスプリングや電動パワーステアリングの不具合が見つかり、大規模なリコールに発展した。

 背景には急成長の歪みがある。10年で世界販売が2倍に伸びるなどしてブランドイメージを高めた一方、「古い会社の体質を改善することが後回しになっていた」(中村知美社長)。米国から帰国し、18年6月に吉永泰之会長からバトンを受け取った中村社長は会見の度に厳しい表情を見せた。

 スバルは再発防止に向け、組織の抜本的な見直しに着手した。不正の温床となった国内唯一の生産拠点である群馬製作所(群馬県太田市)のトップに営業出身の細谷和男副社長をあてた。群馬製作所のトップに営業出身者が就くのは異例だ。

 細谷副社長は中村社長の同期。営業畑が長く、スバルの代名詞となった運転支援システム「アイサイト」の営業戦略を主導した。「しがらみがなく、企業風土改革のキーマンになる」(スバル幹部)と周囲からは期待の声があがる。細谷氏に本人にインタビューした。

「もうワンランク上の品質に高める」


 ―完成車検査不正や大規模リコール(無料の回収・修理)でモノづくりに関わる問題が噴出しました。
 「製造部門で風土改革、品質改革を進めている。製造だけでなく、開発やサプライヤーを含めて一体となって設計段階から改革する必要がある。熟練工が当たり前にできる作業も、経験の浅い作業員が同じようにできるとは限らない。無理をして作業していては問題が生じる。製造の仕方を含め上流にフィードバックして現場を見直している。もうワンランク上の品質に高める」

 ―品質の向上に向けて5年間で1500億円の設備投資を計画しています。
 「製造から開発の全ての工程で品質をよくするためにやるべきこと、やった方がいいことを洗い出し、優先順位をつけて取り組む。投資額の大きさだけが一人歩きしてはいけない。品質の向上に、飛び道具のような対策はない。自動車の製造が高度化する中で、この設備を入れれば終わりというものはない」

 ―再発防止を優先するために工場の操業を落としていますが、2019年度下期に戻す計画です。
 「下期のできるだけ早い時期に操業を回復しようといろいろな改善をしている。生産スピードを従来のような正常化レベルに戻しても、きちんと品質が作り込まれていなくてはいけない。手順をよく見直し試行錯誤している。改善を進める中で細かい問題が出てくるが、それを一つひとつ潰し、積み上げていく」

 ―米中貿易摩擦など通商の不透明感をどうとらえていますか。
 「通商を巡る情勢がどういう方向に動くのか憂慮している。(主力市場の米国と日本で)通商環境が変化すれば、当然当社にも影響が出る。日本を中心に生産し、米国の生産能力を徐々に増やしてきた。(環境が変化しても)生産体制は急に変えられるわけではなく、すぐには動けない」

【記者の目】
 細谷氏は営業や経営企画などのキャリアが目立っており、モノづくりを司る群馬製作所のトップの就任は異例とされている。キャリアの3分の1をモノづくりが占め現場もよく知る。自身のキャリアをいかに風通しのよい企業風土改革につなげるか。細谷氏の改革の成否はスバルにとって生命線となる。失敗は許されない。
(松崎裕)

日刊工業新聞2019年6月28日の記事に加筆

中西 孝樹

中西 孝樹
06月29日
この記事のファシリテーター

記者の目「細谷氏の改革の成否はスバルにとって生命線」という表現は非常に的を得ている。個人的に、昨年以来不正問題が噴出していた群馬の現場になぜ吉永元社長が乗り込んで陣頭指揮を取れなかったのか、非常に不思議であった。乗り越えれない本社と製造の壁があったようだ。この 壁を取り壊し、製造現場 の改革を任された細谷氏の責務は大変に重い。

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